庭づくりには、日陰が必要だ・・・【山椒読書論(511)】
【amazon 『日陰でよかった!』 カスタマーレビュー 2015年2月8日】
山椒読書論(511)
日本で長年、ナチュラル・ガーデンづくりに取り組んできたポール・スミザーは、日陰というものを、我々日本人とは異なる視点で捉えている。
『日陰でよかった!――ポール・スミザーのシェードガーデン』(ポール・スミザー、日乃詩歩子著、宝島社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)で、「庭に立つと、日陰を探す。初めて入る庭で、日陰があると、よかったと思う。これからつくる庭に、日陰がある。植物がひと息つく場所があるということだ。植えられてすぐの植物は、環境が激変することになる。いきなり太陽の下では、体力を消耗する。その土地に慣れて、根が張るまでの間、日陰が助けてくれる。苗を植える。種を植える。根が張るまで、芽を出すまで、日陰は植物を守ってくれる」と述べている。
また、「日本に来て驚いたのは、日陰のことを悪く言う人が多いことだった。『うちは日陰だから、何を植えてもだめなんですよ。なんとかしてください』と、よく相談される」とも、言っている。
一口に日陰といっても、一様ではない。ライト・シェイド(木陰)、ハーフ・シェイド(半日陰)、ディープ・シェイド(濃い日陰)、ダンプ・シェイド(湿った日陰)、ドライ・シェイド(乾いた日陰)があり、それぞれの環境に合わせた庭づくりが必要だというのだ。
広大な庭には縁がない我々にとって、ポールが手がけた「建物と壁に囲まれた庭(東京都渋谷区・H邸)」、「石積みのある半日陰の庭(神奈川県川崎市・K邸)」、「建物に囲まれた濃い日陰の小さな庭(東京都目黒区・K邸)」、「半地下につくる細い三角形の庭(東京都品川区・M邸)」の実例は、参考になるだけでなく、大いに勇気づけてくれる。
庭も人生も、日向ばかりでなく、日陰も必要なんだということを教えられた。