ホタルなど発光する生物の仕組みは、どうなっているのか・・・【山椒読書論(517)】
『発光する生物の謎』(マーク・ジマー著、近江谷克裕訳、西村書店)によって、光を放つ生物に関する知識を深めることができた。
「光る生物」は、発光生物と蛍光生物に分けられ、発光と蛍光では光を発する方法が全く異なる。「多くの生き物は進化の過程で発光(光を自らが生み出す)する能力、あるいは他の発光生物の光を獲得(発光生物と共生する)する能力を身につけました。また、おもしろいことに異なる発光生物は、異なる化学反応の仕組みで光を生み出します。一方、光る理由も様々です。例えば、情報交換のため、餌を獲得するため、あるいは自分の身を隠すために光っていると考えられています。生物発光はとてもユニークな現象です。生物界における適応進化の魅力的な例でもあります。驚くことに、現在知られている動物の門レベル(分類学に従って分けられたグループ)では、およそ半数の門に発光する種が存在しています」。
生物発光の仕組みは、どのようになっているのか。「すべての発光生物がルシフェリンとルシフェラーゼをもち、2つの化学物質が反応することで光が生まれます。また、すべての発光生物は異なるルシフェラーゼをもっています」。
イカ、タコ、クラゲ、エビ、魚、バクテリアなど、多くの発光する生物は海洋に棲息している。一方、陸上に棲息する発光する生物は、ホタル、キノコ、ムカデ、ヤスデ、カタツムリ、ミミズなど少数に止まっている。
生物が体内の化学反応で光を発することを生物発光と呼ぶのに対し、生物蛍光は、外部から与えられた光を吸収して光を発する現象で、サメ、フサカサゴ、オコゼ類などが代表的な蛍光生物である。
生物発光は科学の進歩に大きく貢献している。「最も重要な研究成果の一つは、生物発光が顕微鏡観察の世界に色彩豊かな革新と発展をもたらし、科学、医学を進歩させた点です。・・・光るタンパク質は21世紀の医学に大きく貢献しました。そして、光るタンパク質を用いた研究により2つの研究テーマに関わる人々がノーベル化学賞を受賞しました」。これ以外にも、さまざまな分野で発光生物、蛍光生物の研究が進行中と記されている。