榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「~させていただく」という言葉を耳にすることが増えたのはなぜか・・・【山椒読書論(554)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年5月15日号】 山椒読書論(554)

近年、「~させていただく」という言葉を耳にすることが増え、この言葉に違和感を覚える私にとって、『「させていただく」の語用論――人はなぜ使いたくなるのか』(椎名美智著、ひつじ書房)は、時宜を得た一冊である。

「『させていただく現象』の謎を解く。これが本書の狙いである。『させていただく』を言われて怒る人がいる一方で、『させていただく』の氾濫はとどまるところを知らない。なぜ人は使いたくなり、何が違和感を生むのか? この問いに答えるべく、意識調査で許容と違和の境界を探った」。

本書は学術論文ふうの叙述スタイルが採用されているので、乱暴過ぎるとの非難は覚悟の上で、著者が辿り着いた結論を私なりにまとめてみよう。

●「~させていただく」が繁用されるようになったのはなぜか――。
自分が「~いたします」という丁重語と、相手に「お~します」という謙譲語に代わって、新丁重語の「~させていただく」が使われるようになった。相手に依頼したり、質問したり、願望を伝えたりするたびに、複雑な敬語を使わなくても済み、相手への敬意はそれなりに示せる「~させていただく」を、若年層が好んで使うようになったのである。

●「~させていただく」に違和感や不快感を覚える人がいるのはなぜか――。
年配者には、「~させていただく」が慇懃無礼に聞こえる。