榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

森のためにたたかおう・・・【山椒読書論(596)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年10月28日号】 山椒読書論(596)

木はおどろきでいっぱい』(ニコラ・デイビス作、ローナ・スコビー絵、桑田健訳、高部圭司監修、化学同人)は、木に関する情報が満載の超大型絵本である。横が29cm、縦が35cmもあるのだ。

「木は1本1本がひとつの世界をつくっていて、さまざまな種類の動物たちにすみかや食べものを提供している。わたしたちが森とよんでいる、そんな木々が集まってところには、いろいろな『種』の動物たちがくらしている。町や都会、公園や庭、道路ぞいなどの木々は、わたしたちも自然界の一員だということをあらためて教えてくれる」。

「現在の木――1億2500万年前に登場した花を咲かせる被子植物は、よりよい種子のつくり方と、強い木に育つよりよい方法をもっていた。だから、被子植物が木になりはじめると、とても栄えたんだ。今ものこる広葉樹の種はすべて、顕花植物(花を咲かせて種子をつくる植物)というこの大きなグループに属している」。

「しゃべる木――森の中では、菌根(菌類と植物の根の共生体)がとても大きなネットワークをつくって木と木を結びつけ、栄養分を分けあったり、きけんを知らせあったりしている。ある木が葉を食べる昆虫におそわれると、菌根を通してメッセージを送るんだ。それを受けとったほかの木は葉をじょうぶにして、昆虫とたたかう用意をはじめる」。

「殺し屋の木――動物が絞め殺しの木の種子をほかの木に落とすと、落とされた木はもうおしまいだ。絞め殺しの木は下に向かって成長して、根を土の中にのばし、葉をその木の樹冠に広げる。そのうちに、もとあった木はかれてしまう」。

「昆虫たちがやってくるぞ!――木は昆虫にかじられると、注意のための化学物質を空気中に出すことで、まわりのなかまに昆虫たちがせめてくるから準備をするようにと知らせる。近くの木はメッセージを受けとったら、いやな味がする化学物質をいつもより多く葉に送りこむんだ」。

「動物が森をたがやす――イノシシがえさをさがして森林地帯の地面をほりかえすと、そのおかげで土がととのえられ、種子が芽を出しやすくなるんだ」。

「気泡変動とたたかう木――人間がこれまで何百年間も石炭や石油や木をもやしてきて、空気中に二酸化炭素が増えすぎたせいで、気候変動がおこっている。木は光合成で酸素をはきだすと同時に、二酸化炭素をすって自分が成長するためにつかうから、ここでも助けになってくれるんだ。木の幹や枝には二酸化炭素がとじこめられているから、気候変動がもっとひどくなることをおさえているんだ」。

「森のためにたたかおう――森を救うための最初の一歩は、森がどれだけ大切なのかを知って、ほかの人たちにそれを教えることだよ(これなら、みんなも今すぐにはじめられるね!)。次の一歩は、世界各地の森を保護するために活動している自然保護の慈善団体の手伝いをすることだ。学校や近所や家のうら庭に、自分の小さな森をつくることができるかもしれないね。木は1本だけでも野生の生物をささえてくれるし、気候変動とたたかう小さなお手伝いになるよ」。

「人間には木が必要だってこと、わすれちゃだめだよ!」。

大人でも勉強になるだけでなく、色鮮やかなイラストも楽しめる一冊だ。