自転車事故で脊髄損傷を負った著者が、口に銜えた絵筆で描いた絵本・・・【山椒読書論(597)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年10月29日号】
山椒読書論(597)
『ボッチャの大きなりんごの木』(滝川英治作・絵、朝日新聞出版)は、自転車事故で脊髄損傷を負った滝川英治が、口に銜えた絵筆で描いた絵本です。
まちにまったロードバイク大会に出場した象のボッチャは、コーナーで転倒事故を起こしてしまいます。「この大きな手が うごかない。この大きな足も うごかない。ぼくは・・・、もう 歩けない」。
つぎの「つぎの日、ボッチャが 目をさますと、遠く ハナれた場しょに 赤いりんごが おいてありました。・・・『あんなに 遠くじゃ ぜったいに とどかないよ・・・』」。
また、つぎの日、「ファーは 歌いながら ボッチャから もっと遠く ハナれた場しょに りんごを おいていきました。・・・『あんなに 遠くじゃ とどくわけないよ・・・』」。
またまた、つぎの日、「ファーは 歌いながら ボッチャから もっと もっと遠く ハナれた場しょに りんごを おいていきました。
それから、また、つぎの日も、そして、つぎの日も、つぎの日も、そのつぎの日も、「ボッチャは はるか遠く ハナれた 光の先へ・・・『えい! えい! えい!』。つかめ! つかめ! つかめ! いけ! いけ! いけ! もう一歩 先へ! もっと 遠くへ! えーい!!」。
「ぼくは・・・ぼくだ」。
「ぼくは・・・この大きな手が つかえない。この大きな足も つかえない。それでも、あきらめない! ぼくだって! ぼくも! ぼくはいきる!!」。
「ぼくには・・・、明日がある。いちについて! よーい! スタート!!」と結ばれています。
著者は、自分を励ますために、そして、同じように障碍を抱えている人々を励ますために、頑張って、この絵本を描いたのでしょう。