榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

日本の3大問題に対する大前研一の処方箋とは・・・【山椒読書論(706)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年5月15日号】 山椒読書論(706)

経済参謀』(大前研一著、小学館)では、日本の3大問題――少子化問題、教育問題、国民国家問題――に対する処方箋が示されている。

●少子化対策――「18年前倒し」で加速する人口減少をどう止めるか
「少子高齢化というのは、もう何十年も前から警鐘を鳴らされてきた課題だが、政府はこれまで問題解決に向けて有効な対策を何一つ打てていない」。

大前研一の処方箋は、①若者の将来の不安を取り除く、②戸籍制度の撤廃(生体認証を導入してセキュリティを確保しつつ、個人と国家を電子的につなぐ仕組みへの転換)、③移民の受け入れ――の3つである。

●教育改革――文部科学省による前時代的教育をいかに変えていくべきか
「21世紀になると、突出した人材をいかに輩出するかが重要になった。にもかかわらず、文部科学省はいまだにそういった教育にシフトしていない」。

「21世紀の教育というのは、見えないものを見る力、0から1を生む構想力――こういったものを育んでいくようなものでなければなりません」。

大前は、理系の勉強によって「0から1を生む」力を養っていく、99%理系にしていく、理系メインのSTEM(S:科学、T:技術、E:工学、M:数学)教育にA(リベラルアーツ)を加える――ことを提唱している。

●新・地域国家論――もはや国全体が繁栄することはありえない
「近現代においては、人々は『国民国家』という概念で考えることが当たり前になっている。そのため、何か問題に遭遇した場合、『国』としてどうするかということを考える人が多い。しかし、世界でいま繁栄しているのは『国』ではない。国の中の一部の地域=『メガリージョン』だ。世界的に見れば成長を続けている中国においても、成長している地方と、繁栄とは無縁の地方とが混在している。つまり、『地方』という単位で経済や産業を考える必要が出てきているのである」。「メガリージョン」とは、人・モノ・カネ・情報が国境を越えて集まってくる地域を指している。

大前は、国家という前提を捨てよ、国防・外交・金融政策は国家が担うとしても、それ以外の領域は国民国家を卒業し、新たな地域国家像を模索すべき――と主張している。

大前の提言・主張はいずれもかなり過激だが、直ちに、真剣に検討すべきだろう。