榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

標本でなく生きている昆虫を白バックで撮影した写真が掲載されている、識別に役立つ図鑑・・・【山椒読書論(749)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年10月7日号】 山椒読書論(749)

観察した昆虫、撮影した昆虫の種や雌雄の識別がなかなかできず、往生することが多い。つい先日も、こんなことがあった。メスグロヒョウモンの雌を見かけたエリアを飛び回る雄をカメラに収めようと、2時間近く頑張り、漸く鮮明な写真を撮ることができた。帰宅しての写真確認の段階で、メスグロヒョウモンの雄かミドリヒョウモンの雄か迷い、堂々巡りの末に、漸くミドリヒョウモンの雄と判断したのである。

自然観察会のチョウに造詣の深い仲間に、いい図鑑がないか尋ねたところ、『ポケット図鑑 日本の昆虫1400(①チョウ・バッタ・セミ)』(槐真史編著、伊丹市昆虫館監修、文一総合出版)を薦められた。真っ先に、ミドリヒョウモンの雄(写真2)とメスグロヒョウモンの雄(写真3)のページを開いたら、白バックの写真が両者の表翅の黒紋の違いを明快に示しているではないか。

本書の優れている点は、3つある。
第1は、野外で実際に遭遇する可能性の高いチョウ目、ゴキブリ目、カマキリ目、バッタ目、ナナフシ目、ハサミムシ目、カメムシ目の732種が選択されていること。
第2は、生態写真と、標本でなく生きている昆虫を白バックで撮影した写真が掲載されていること。
第3は、識別点が分かり易く解説されていること。