下級藩士・能登寅之介(41歳)は、江戸詰め時、飯炊き女・お清(32歳)と一度だけ関係を持つが・・・ ・・・【山椒読書論(773)】
【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月5日号】
山椒読書論(773)
コミックス『黄昏流星群(68)――江戸の落星』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「江戸の落星」は、藤沢周平や葉室麟の時代小説の読後のような気分を味わわせてくれる時代物である。
弱小藩の下級藩士・能登寅之介(41歳)は、江戸中屋敷勤務時、縄暖簾で働いていた年増の飯炊き女・お清(32歳)と一度だけ関係を持つ。
2年後、参勤交代で江戸に戻ってきた寅之介は、久しぶりにお清を訪ねるが、寅之介の子・寅吉を育てていると告げられ、慌てて逃げ去る。「この子は私一人で育てます。能登様にご迷惑をかけたくありませんから」。
それから12年後、55歳になった寅之介は隠居を命じられる。
今になって、お清と寅吉のことが気にかかる寅之介は、江戸に向かう。「あの場から逃げた卑劣な俺だが・・・寅吉の成長した姿を物かげからこっそり見たくなった」。
その江戸では、思わぬ展開が――。