榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

金太郎の母は山姥だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(422)】

【amazon 『金太郎の母を探ねて』 カスタマーレビュー 2016年6月17日】 情熱的読書人間のないしょ話(422)

古い資料を整理していたら、ピーテル・ブリューゲルの「錬金術師」の絵に「速読する錬金術師――錬金術師は、金を造るうえで多くの書物を読む必要があったので、速読術もマスターしていました」と書き込まれたものが出てきました。何か違和感を覚えたので調べてみたところ、本来の絵とは左右が反転していました。

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Pieter_Bruegel_the_Elder_-_The_Alchemist[1]

足柄山の金太郎は「金」の字の腹巻をしていますが、このことに関し、『金太郎の母を探ねて――母子をめぐる日本のカタリ』(西川照子著、講談社選書メチエ』には、こんなことが書かれています。「『金太郎の<金>の字に注目せよ』と初めに言ったのは高崎正秀であるが、岡見は、金属を扱う者はいわゆる錬金術師である」と指摘しているというのです。

この本には、金太郎の母について、面白いことが記されています。「源頼光(948~1021年)(多田源氏の祖・源満仲の子)が上洛する時、足柄山で『怪しの母子』を見る。老婆と童形の子である。奇妙な取り合わせの母子に頼光、興味を抱いて問う。頼光が老女に、『なぜこんな山奥にその童と二人きりでいるのか。名は何というのか。その子はあなたの子か。父親は誰か』と問うと、老女は、自らの身の上を語り始める。『私どもに名などありません。この子は私の子ですが、父はおりません。私は長い間、この山中で暮らしてきました。そんな或る日のこと、居眠りをしておりますと、夢に赤い竜が現われて、雷が轟きました。その時、この子を身籠もったのです。それで夢から覚めましたが、赤子を身籠もったのは夢ではなく現実でした。あれから20年ほど経ちます。この子は身も心も強い子ですが、まだ幼い』」。

『前太平記』によれば、頼光は、老女の傍らで恥ずかしそうにしている山の子をいたく気に入り、家臣にしたいと老女に申し出ます。そして、金太郎は坂田(酒田)金時(公時)という名を与えられ、頼光の四天王となって、大江山の酒呑童子退治で活躍するのです。

本書は、金太郎の母は山姥(やまんば)という説に立ち、全国で脈々と受け継がれてきた母子神信仰の根源に迫ろうと試みた民俗学の意欲作です。