貧困家庭の子供は、子供時代だけでなく、大人になっても悪影響が・・・【情熱的読書人間のないしょ話(551)】
散策中に、高い梢に止まり、キチキチキチと鋭い声で縄張り宣言をするモズの雄をカメラに収めることができました。コサギの水中の黄色い脚指が透けて見えます。我が家のキンモクセイの花が地面を橙色に彩っています。因みに、本日の歩数は10,589でした。
閑話休題、『貧困 子供のSOS――記者が聞いた、小さな叫び』(読売新聞社会部著、中央公論新社)では、新聞記者たちが子供の貧困という重いテーマに挑戦しています。彼らは、自分たちに、●子供に直接取材して、子供を主語にして書く、●徹底した裏付け取材をする――という2つの要件を課しています。
例えば、「2014年のクリスマス。首都圏の公営住宅に住む恵(12)は薄暗い部屋で、スエット姿で毛布にくるまり、寒さに震えながら、母(50)の帰りを待っていた。・・・(近くの公園から)持ち帰った水でのどを潤し、母とおにぎりを一つずつほおばった。この日初めての食事。あまりの惨めさに、涙も出なかった」。
「『小学校のことを思い出すのは辛い』。横浜市の中学2年の早苗(14)はそう言って、うつむいた。・・・父は約束した慰謝料や養育費を支払わなかった。(母)絵里子(45)はスーパーのパート社員として働き始めたが、月収10万円程度で生活は苦しく、入居できたのは家賃が3万円の風呂のないアパート。・・・転校先の小学校では、女子児童の間で『お泊まり会』がはやっていた。クラスに早くなじもうと、自宅に友達を招いたが、風呂も家具もない部屋に驚かれた。『風呂のない家に住んでいる』。噂はすぐに広がり、学校で孤立することが増えた」。
「日本では母子家庭の半数以上が貧困状態にあり、ひとたび貧困に陥ってしまうと、生活を平均的水準に戻すことが難しいと言われています。母子家庭は、母親が非正規の仕事にしか就けないため収入が低く、収入を得ようとダブルワークをすると、今度は時間や気持ちに余裕がなくなり、新しい技術を身に着けたり、転職をしたりできなくなる――といった悪循環に陥りやすいからです。母親が必死に働いていても貧しさから抜け出せないという母子家庭特有の問題を解決することは急務です」。全く同感です。
「一般的に、貧困家庭に育った子供は、自己肯定感が低く、夢や目標を持てないことが多いと言われます。それは『貧困』という子供自身の才能や努力、我慢だけでは到底克服できない壁にぶち当たり、子供は『どうせ報われないのだから頑張っても無駄』と体験的に学習してしまうからだと言われています。貧困家庭での暮らしを経験すること自体、子供にとって辛いことだと思いますが、それ以上に深刻なのは、貧困経験を積み重ねた子供は将来生きる意欲や夢を持てない無理力な大人になってしまいかねない、という点だと考えます。貧困は子供から夢や希望を奪い、その喪失経験は後遺症的に残るのだと思います」。各事例から、貧困がもたらす深刻な影響の痛ましさがひしひしと伝わってきます。
「豊かなはずの日本で、子供の6人に1人が貧困に苦しんでいる。貧しさから進学をあきらめる子や、食事も満足にとれない子がいる。家庭の経済状況で、子供の未来が左右されない社会を作るにはどうすべきか」を考えさせられる一冊です。