榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

若い時より、70歳の今の自分が好きだというメイ・サートン・・・【情熱的読書人間のないしょ話(572)】

【amazon 『70歳の日記』 カスタマーレビュー 2016年10月24日】 情熱的読書人間のないしょ話(572)

散策中、いろいろな所で秋の深まりを感じました。モミジバフウ、ソメイヨシノ、イロハモミジが紅葉しています。カラスウリの実が橙色に色づき、ツバキの実が弾けています。我が家のハナミズキも紅葉しています。因みに、本日の歩数は10,947でした。

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閑話休題、『夢見つつ深く植えよ』と『独り居の日記』を読んだ時の快感を、『70歳の日記』(メイ・サートン著、幾島幸子訳、みすず書房)でも味わうことができました。

「70歳になるって、どういうことなのだろう? 私は、自分が年寄りになったとは思わない。ここまで長生きしてきたというより、まだまだ途上にあるという感じ。人がほんとうに老いるのは、先のことより過去のことばかり振り返るようになったときかもしれない。今の私は、これからのことがとても楽しみだし、いったいどんな驚きが待ちうけているかと思うとワクワクしてくる」。

「ひとつ確かなのは、ずっと昔からわかっていたことだけれど、私の生きる歓びは年齢とはまったく関係ないということ。それは不変のものだ。花々、朝と夕暮れの光、音楽、詩、静寂、すばやく飛びまわるオウゴンヒワ・・・」。

「いろいろ(昔の)写真を見ていて思ったのは、今の自分の顔のほうが好きだし、いい顔をしているということ。25歳のときにくらべて今のほうがずっと成熟した、中身も豊かな人間になっているからだ。若いときは野心と個人的な葛藤がすべてで、表面的には知的を装っていても、中身はまるで違っていた。今は中身がそのまま外に出ているし、自分自身に満足してもいる。ある意味ではかえって若くなったかもしれない。今は自分の弱さを素直に認められるし、何かのふりをする必要がなくなった今のほうがずっと無邪気でいられる」。私も、若い時は至らぬことばかりだったと反省頻りです。

「80代が人生でいちばん幸せだと言ってのける人といっしょにいるのは、ほんとうに楽しい」。

「芸術として考えたとき、いつも頭に浮かぶのは、文体によって伝わるのは、その人の人生観だということ。テーマが何であろうと、読者にはそれが伝わるのだと確信している」。文章を通じて、自分の人生観、価値観を伝えることができたら最高ですね。

「雨のあとの晴れた朝ほど美しいものがあるだろうか? 草木はたっぷり水を得、すべてが輝いている」。

「3日前に、芝生の落ち葉かきを始めるぞと心に決め、実際やってみると、1時間半でかなりの量がこなせることを発見。ここから得られる教訓は、自分の手に余ると思う仕事が目の前にあったら、とにかくやり始めるべきだということ。ぐずぐずしていればパニックに陥り、ますますその仕事が恐ろしく思えてくるだけだ」。

「朝目ざめると、ああ、今日も一日静けさのなかで仕事ができる、と思える日が続いている。なんという贅沢!」。この気持ち、よく分かります。私も、毎朝、目覚めた時、その日にすることを思い浮かべるとワクワクしてくるからです。

「自分が70歳で、しかもこんなに若い気がすることが信じられない。実際、『海辺の家』を書いたとき(62~64歳のとき)よりもずっと若い気がする。人は先のことを不安に思うけれど、実際にそうなってみると、不安に思っていたのとはまったく違うというのが真実ではないだろうか。最近では、70歳なんてまだまだ老人ではない――とくに健康に恵まれていれば」。強い共感を覚えます。

本書から、多くの励ましを得ることができました。メイ・サートンの揺るがない価値観、力強い生き方、向上心を保ち続ける姿勢を再認識しました。