貧栄養の海のサンゴ礁に多くの生物が集まるのはなぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(626)】
我が家のサンタ・クロースがツイスパソーダ(グリーンハウス)をプレゼントしてくれたので、自分でハイボールを作れるようになりました。ウィスキーは糖質制限で規制されていないアルコールです。メジロは私の喜ぶ顔を見に来たのでしょうか。
閑話休題、『サンゴ――知られざる世界』(山城秀之著、成山堂書店)で、サンゴについて、いろいろ多くのことを学ぶことができました。
「サンゴが生育し、サンゴ礁が発達する暖かい海は、実は生き物が棲むには厳しい環境とも言えます。海の透明度が高いということは、海水中の栄養塩が少ない貧栄養の海、すなわち植物プランクトンや動物プランクトンなどが少ないことを意味します」。
このような環境なのに、サンゴ礁に多くの生き物が集まるのは、なぜでしょうか。「その理由は、サンゴの体の中に共生している褐虫藻という小さな藻とサンゴの関係がうまく成り立っているからです。褐虫藻の光合成で作り出された糖などの栄養分を、サンゴは自身の成長などのエネルギー源として利用していますが、使い切れなかった余剰分を粘液などにして周囲に放出しています。サンゴが放出した物質は、サンゴ礁の食物連鎖を支えるスタート台となり、多くの生物の糧となっています。小さなサンゴの個虫(ポリプ)が石灰を沈着しながら複雑な群体を作り、それらが集まり長い歳月をかけてサンゴ礁という大きな構造物となります。多くの生物はサンゴを住居として、あるいは食料のにじみ出てくる餌場として集まってきます」。
一方、サンゴは生きるのが難しい時代を迎えています。「1998年の夏には海水温度が2°C上昇し、造礁サンゴのパートナーの褐虫藻が抜け出してサンゴが餓死する大規模白化現象が起きました。ほんの数か月で国内の造礁サンゴの8割が失われてしまいました。・・・その後もサンゴの白化は度々起きています。・・・さらに、サンゴの病気(致死性の感染症)の問題も起きています」。
私が、沖縄・八重山諸島の小浜島の沖合のどこまでも広がるサンゴ礁でカクレクマノミなどと戯れたのは、当地の白化現象が問題視される直前のことでした。見事なサンゴ礁と目の前を泳ぎ回る熱帯魚たちとの夢のような出会いの光景が、今も鮮明に浮かんできます。
サンゴは植物なのか、それとも動物なのでしょうか。「動き回らないので植物と思われていることもあるサンゴですが、イソギンチャクやクラゲに近い『刺胞動物』です」。木の枝のように見える、石灰で作られている骨格の中のポリプが触手で動物プランクトンなどを捕らえて食べる「肉食」系なのです。
サンゴとサンゴ礁は違うのでしょうか。サンゴ礁は、サンゴの骨格や、さまざまな生物が死んで残した石灰の殻が積み上がり、繋がってできた構造物です。サンゴ礁を造るサンゴを造礁サンゴと呼びます。
外国船による密猟で話題になったアカサンゴやモモイロサンゴなどの宝石サンゴと、造礁サンゴの違いは何でしょうか。造礁サンゴは浅い海に棲んでいますが、宝石サンゴは太陽の光がほとんど届かない深海で、褐虫藻に依存せずに棲息しています。
写真と分かり易い解説によって、サンゴの世界がぐんと身近に感じられるガイドブックです。