世界を変えた書物が満載の、文庫本の5倍の大型本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1245)】
散策中、仄かに香りがすると思ったら、キンモクセイが咲き始めているではありませんか。サルビアが赤い花を咲かせています。アサガオも頑張っています。ムベがほんのり色づいてきました。因みに、本日の歩数は10,031でした。
閑話休題、『世界を変えた本』(マイケル・コリンズ他著、樺山紘一監修、藤村奈緒美訳、エクスナレッジ)には、紀元前3000年から1900年以降までの、世界に大きな影響を与えた72の書物が収録されています。文庫本の5倍の大きさ、重さ1650gの大型本の見開き2ページを占めるカラー写真は、博物館のガラス越しの展示よりも迫力があります。
私が翻訳で読んだことのある書物も取り上げられているが、鮮明な写真のおかげで、現物を手にしているかのような気分を味わうことができます。
とりわけ興味深いのは、『死海文書』、『源氏物語』、『君主論』、『コスモグラフィア』、『魔術の暴露』、『ドン・キホーテ』、『ウィリアム・シェークスピア氏の喜劇、史劇、悲劇』、『百科全書・または科学、芸術、工芸の合理的辞典』、『アンクル・トムの小屋』、『種の起源』、『一般相対性理論』、『アンネの日記』です。
『グーテンベルク聖書』は、活字がぎっしり組まれていたことが分かります。「グーテンベルク聖書はヨーロッパで初めて活字を用いて大量生産された本として重要であり、本のつくり方が劇的に変わったことを告げる存在となった。1450年代までは、本といえば手書きか木版刷りと決まっていた。本を所有できたのは、裕福な人々か、写本の大半を制作していた修道院だけだった。本は希少で、どんなに優れた作品でもごく限られた人の目にしか触れなかったのである。ところが、15世紀半ばにヨハネス・グーテンベルクが印刷機を発明すると、本の生産方法は一変した――ヨーロッパで初めて、同じ内容の本を大量かつ迅速に印刷できるようになったのだ。15世紀末までに発行された本は、ヨーロッパ大陸全体で数百万部に達した」。
『ニュルンベルク年代記』の挿し絵の鮮やかさには、目を奪われます。「『世界年代記』、一般的には『ニュルンベルク年代記』の名で知られるこの本は、聖書や古典にもとづく世界の歴史を総合的に記したもので、15世紀の印刷技術の粋を示す最も印象深い例のひとつである。特に目を引くのが挿絵の豊富さで、645種類以上の版木を使った1800点以上もの図版が掲載され、その多くに手彩色が施されている。聖書の内容や歴史上の出来事、肖像画、家系図のほか、ヨーロッパと近東一帯の100近くの主要都市の景観図や世界地図も載っている」。
『レスター手稿』からは、レオナルド・ダ・ヴィンチの関心の幅広さが窺われます。「『レスター手稿』は、イタリアの万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチが科学に関する事柄を書き留めたノートである。・・・文字がびっしりと書き込まれているほか、インクで描かれた図も、余白の走り書き程度のものから熟考の末に丁寧に描かれたものまで合わせて300点を超える。この手稿から浮かび上がるのは、レオナルドが自分を取り巻く世界に広く関心を持ち、世界の謎は詳細な観察によってのみ解き明かされるという信念を持っていたことである。従って、『レスター手稿』は17世紀と18世紀の科学革命を明らかに先取りした存在だと言える」。
『エピトメー(人体構造論抄)』の精緻な人体図、解剖図は、現代の解剖の専門書といっても通用するほどです。「解剖学図の新たな基準を定めたアンドレアス・ヴェサリウスの『エピトメー』は、科学的な正確さと芸術的な美しさが融合した、これまでにない書物だった」。
『二大世界体系についての対話(天文対話)』の中で、ガリレオ・がリレイは、コペルニクスの地動説に軍配を上げています。「これこそ人々の宇宙観を変えた一冊である。この『二大世界体系についての対話』で、イタリアの数学者ガリレオ・ガリレイは、地球が太陽の周りを回っているというコペルニクスの宇宙観と、地球が宇宙の中心であるとするプトレマイオスによる従来の宇宙観を比較検討した」。
『ミクログラフィア』に載せられているノミの図版は46cm×30cmと、目を瞠る巨大さです。「ロバート・フックの先駆的な著作『ミクログラフィア』は、顕微鏡観察に関する世界で初めての本として1665年に出版された。フックは昆虫や微生物や無生物を顕微鏡で観察し、精密で正確な絵とともに記録した。・・・銅版による見事な図版はこの本の最大の特徴で、大きいために折り込み式になっているものもある」。
本書は、内容も重量も重いですよ。