榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

25歳から6年間、東京郊外の小さなアパートで隠居生活を送ってみた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1287)】

【amazon 『なるべく働きたくない人のためのお金の話』 カスタマーレビュー 2018年10月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(1287)

アオサギを見かけました。ダイサギとコサギが一緒にいます。コサギが片脚を水中で震わせて小魚を驚かせ、器用に捕らえるところを目撃しました。見事に、2回とも嘴に小魚を銜えています。マガモの雄、オナガガモの雄、オナガガモの雌もカメラに収めました。大きな黒いコイがうようよいます。因みに、本日の歩数は10,179でした。

閑話休題、『なるべく働きたくない人のためのお金の話』(大原扁理著、百万年書房)には、猛烈サラリーマンだった私とは正反対の生き方を選択した若き男性の暮らしぶりが描かれています。

「私は25歳から約6年間、東京郊外の小さなアパートで隠居生活をしていました。隠居生活といっても、落語や講談に出てくるような江戸時代のご隠居さんとは違います。私の場合は、社会との関わりを最小限にして、基本的に週2日働き、年収は100万円以下で暮らす、という感じです。ITや株などの特殊能力もありませんが、親や国に頼ることもなく、普通にハッピーに暮らしていました」。

「その隠居生活のなかで体験した、『年収が下がるにつれて経済的不安からも解放される』という不思議な現象の当事者として、あの頃の私が、どう考え、行動し、お金に対する考え方や接し方がどんなふうに変わっていったのか。そうしたことを、記憶が確かなうちに記録しておきたいと思ったのが、この本を書くきっかけになりました」。この不思議な現象に至るまでの、著者の考え方や行動には、大いに興味が湧きます。

「東京での6年間の隠居生活が破綻しなかった理由のひとつは、社会や他人からの『いいね!』を求めなかったことだと思います。・・・誰からも褒められもしなければ、けなされることもない。ですから、他人の言動に影響されることなく、自分の実感するところに従って、よりよい生活をつくっていくことが容易にできました。・・・世間の評価というのは、数年で、ひどいときには数日で変わってしまう、当てにならないものだということは、覚えておいたほうがいいです。そんないい加減なものの上に、大切な自分の生活を築いては危険です」。

「隠居生活をしていると、買いたいものがなんでも買えたり、行きたいところにどこでも行けるわけじゃない。むしろ経済的にはできないことの方が多く、とても不自由に見えます。なのに、実際はなぜか毎日ハッピー。これはどういうことかというと、隠居生活のなかで、楽しみごとをお金に依存しない方法が身についたからだと思っています。・・・もうひとつの自由って、『幸せをお金に依存している状態から自由になること』なんですね。お金があってもなくても、どこで何をしていても、ハッピーを感じられるような心のありかたと言いますか。ここではないどこかではなく、身の回りの身近なところから、楽しみごとを見出していくこと。それがやがて、お金があってもなくてもどちらでもハッパーな生活につながっていきます」。なるほど、そういうことだったのですね。

「いま私にとって大切なことは、1円も出ていかないようにお金を必死にコントロールしたり、他人より多く稼ぐことではなく、お金が遊びに来たいと思えるような人でいるように、いつでも緊張感を失わずに生きることです」。

「具体的にいうと、●自分がどうありたいかを人任せにせず、人生の舵を自分でにぎり、毎日を地道にしっかりと生きること。●とくに何もない一日でも、無事に生きられたことに感謝すること。●低所得だからといって卑屈になったり、高所得だからといってお金や人を軽んじたりしないこと。●他人を羨まず、いま目の前にいてくれる人やモノやお金を大切にすること。●同じお金を使うなら、いかにひとりでも多くの人ガハッピーに、楽しくなるように使えるかをつねに真剣に考えること。●お金の量や用途に惑わされ、ネガティブな気持ちに突き動かされていないかをじっくりと検分すること。●本当に大事なものは何なのか考えることから目を逸らさせ、ありとあらゆる方法で心を急かしてくるものを、きちんと拒むこと」。

こういう人生もありだな、と思わされる一冊です。