榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

宇宙の誕生から人類の進化までの138億年が短時間で俯瞰できる一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1330)】

【amazon 『宇宙からいかにヒトは生まれたか』 カスタマーレビュー 2018年12月11日】 情熱的読書人間のないしょ話(1330)

山梨の星野リゾート・リゾナーレ八ヶ岳と、神奈川のさがみ湖イルミリオンでイルミネーションを楽しみました。因みに、本日の歩数は13,144でした。

閑話休題、『宇宙からいかにヒトは生まれたか――偶然と必然の138億年史』(更科功著、新潮選書)は、宇宙の誕生から人類の進化までの138億年が、この一冊で俯瞰できるように工夫されています。簡にして要を得た解説が理解を深めてくれます。主な学説を紹介した上で、著者自身の考えを明示している点に好感を覚えました。

私にとって、とりわけ興味深いのは、宇宙の誕生と、生命の誕生が解説されている部分です。

「(宇宙空間の)次元は4つ以上あるかも知れない。でも、ないかも知れない。どっちか分からないのなら考えるだけ時間の無駄のように思えるが、実は次元がたくさんあると、とてもいいことがあるのだ。重力と電磁力のような別々の力を、統一的に説明することができそうなのである。これは物理学者の、いや科学者の夢なのだ。そこでとりあえず、ストリング理論(素粒子を点でなく、ひも状に広がった物体と考える理論)は正しいとしよう。すると私たちの宇宙は3つの次元だけが大きく広がって、残りの6つか7つの次元は縮んでいることになる。ところで、次元の縮み方は何通りもあるので、宇宙の存在の仕方にはものすごく多くのパターンが存在する。その中で、私たち生命が存在できるような宇宙はほんの一部なのだ」。

「おそらく宇宙はたくさん存在している。その中の1つとして、私たちの宇宙は誕生した。誕生しておよそ10のマイナス36乗秒後に、私たちの宇宙は一気にふくらみ始めた。ふくらむスピードが指数関数的に増加したので、つまり2倍、4倍、8倍、16倍と増加したので、この時期をインフレーション期と呼んでいる。一瞬のうちに、小さな原子ぐらいだった宇宙が、太陽系よりも大きくなる。そのくらい、すさまじい膨張だった。しかし、宇宙の誕生からおよそ10のマイナス34乗秒後に、膨張が急に減速する。何かに衝突したわけではないのだろうが、スピードが一気に落ちたという意味では、車が壁に衝突したのと同じである。そして、莫大なエネルギーが一気に放出された。しかし宇宙の場合は、外へエネルギーを放出することはできない。莫大なエネルギーのすべてを、宇宙の内部に放出するしかないのだ。そして私たちの宇宙は火の玉のようになって爆発した。それがビッグバンである」。

「遅くとも約38億年前には、地球には海ができていた。そして最古の生命の痕跡も、やはり約38億年前の地層から検出されている。したがって、38億年前の地球には、すでに海があって生物が存在していたということになる。ということは、生物が誕生したのはその少し前だろう。だいたい40億年前といったところだろうか」。

「現在もっとも有力な仮説は『生命は深海の熱水噴出孔付近で生まれた』というものである」。

「現在の地球のすべての生物は、ただ1種の最終共通祖先から進化してきたものである。この全生物の最終共通祖先のことをルカ(LUCA:Last Universal Common Ancestorの略)という。たまに勘違いをしている人がいるが、ルカは最初の生物というわけではない。おそらくルカが生きていたのは、最初の生物が生まれてから何億年もあとの時代であろう。当然、ルカがいた時代にも、ルカ以外にたくさんの細菌(バクテリア)がいたに違いない。だが、ルカ以外の細菌は、すべて子孫を残すことなく絶滅してしまった。現在まで子孫を残しているのは、ルカだけなのだ。地球のすべての生物はDNAを持っている。これはルカがDNAを持っていたからである。・・・ルカは細菌で、リボソームRNAの遺伝子や、タンパク質を合成するときに働く伸長因子の遺伝子などを、すでに持っていたと推測された」。「ルカは深海の熱水噴出孔付近に住んでいて、化学合成をする好熱菌であった可能性が高いのである」。本書のおかげで、ルカというものを知ることができました。

「西オーストラリアのシャーク湾には、ストロマトライトという縞模様のついた丸い岩石がある。これはラン藻が作った構造物で、ラン藻の死骸とシリカなどの堆積物が互層になって、縞模様に見えるのである。現在では限られた地域にしかストロマトライトは見られないが、20億年ぐらい前には世界中の浅瀬にストロマトライトが乱立していたと考えられている。最も古いストロマトライトとしては、およそ27億年前のものが知られている。そこで一応、こう考えられる。地球に磁場が形成され、生物が浅瀬に進出できるようになった。最初に酸素非発生型の光合成細菌が現れ、その後ラン藻が進化してストロマトライトを作り始めた。これらの一連の出来事が起きたのが、だいたい27億年頃だったのだ。・・・遅くとも約27億年前にはラン藻が出現し、酸素を大気中に放出し始めたのである」。

最後の最後に、地球の運命について驚くべきことが書かれています。「地球はこれから50億年以上、太陽系の惑星として存在し続けるだろう。地球が誕生したときから考えれば、100億年以上の長きに亘って、地球は太陽系の惑星であり続けることになる。そして最後は、赤色巨星となった太陽に飲み込まれて、地球はその一生を終えるのだ。しかしそれよりもずっと前、おそらく今から10億年後(遅くとも20億年後)には、気温の上昇によって地表にあった液体の水はすべて蒸発し、海は消滅してしまう。そうなれば、もはや生物は存在できない。つまり地球の歴史は、約45億年前から約50数億年後までのおよそ100億年だが、生物の歴史は、約40億年前から約10億年後までのおよそ50億年というわけだ。私たちヒトが生きている現在は、地球の生命の歴史のだいたい5分の4が終わった時点ということになる。残りは5分の1、およそ10億年だ。・・・地球は、乾燥した灼熱の大地に覆われた、生物のいない世界に戻るのだ」。自分の生きている間には起こらないことだとしても、暗然とした気持ちになってしまいました。