榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

海底に眠る蒙古襲来時の元軍船発見に導いた中考古学・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1401)】

【amazon 『海底に眠る蒙古襲来』 カスタマーレビュー 2019年2月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(1401)

本物の花のように精巧に作られています。

閑話休題、『海底に眠る蒙古襲来――水中考古学の挑戦』(池田榮史著、吉川弘文館・歴史文化ライブラリー)によって、「水中考古学」の基本を知ることができました。

「常時、水面下に存在する遺跡のことを水中遺跡と呼び、水中遺跡を調査・研究する考古学を水中考古学という」。

「平成23(2011)年10月11日、私は長崎県松浦市鷹島の南海岸から200メートルほど沖合に位置する水深約23メートルの海底に潜水していた。鷹島南海岸を含む伊万里湾一帯は蒙古襲来(元寇)の舞台の一つであり、弘安4(1281)年に起こった弘安の役の際には総数4400艘とされる元軍船の多くが暴風雨によって沈没したとされる海域である。・・・海底作業中の作業ダイバーからの連絡を受け、急いで潜水した私の目の前に木材や磚(せん。レンガ)が少しずつ見えてきた。目を凝らすと、調査区のほぼ中央には東西方向に伸びる幅約50センチの竜骨(船底中央の木材)があり、その南北両脇に整然と並ぶ外板(船底材)、およびその上に散乱する大量の磚の山がはっきりと姿を見せたのである。長年におよぶ鷹島海底遺跡調査のなかで、蒙古襲来の際の元軍船に初めてたどり着いたことを確信した瞬間であった」。

「元軍船の発見は全国的なニュースとして取り上げられたが、むしろ私たちのなかでは元軍船の発見よりも元軍船発見に至るまでの過程が重要であり、今も鮮烈な記憶として残っている。元軍船をはじめとする蒙古襲来関係遺物を見つけるにはどうすればよいかを考え、海底地形図の作成や地層堆積情報の蓄積を図り、その分析に基づいて広大な伊万里湾海底のなかから調査対象となる海域を選定し、突き棒調査や試掘調査を行って元軍船に到達する。その過程こそが、多くの失敗を重ねながらそれを乗り越えるための創造性に富んだ時間を過ごすことのできる至福の経験だったのである」。