どさ回りのサーカス団の若きショー・ダンサーとライダーの殺人計画・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1521)】
ヒマワリが咲き始めました。ルドベキアの黄色い花が目を惹きます。ビヨウヤナギが陽を浴びて輝いています。ヘメロカリスのヒメキスゲという品種が黄色い花を、ヘメロカリス・サイテーションが深紅の花を咲かせています。サルビアが朱色の花を、メドーセージ(サルビア・ガラニチカ)が青い花を付けています。グラジオラス、カクテル(コクテール)も頑張っています。我が家のナツツバキは、これから2カ月間、次から次へと一日花を咲かせ続けてくれることでしょう。因みに、本日の歩数は10,960でした。
閑話休題、短篇集『夜のアポロン』(皆川博子著、日下三蔵編、早川書房)に収められている『夜のアポロン』は、どさ回りのサーカス団が舞台です。
一座のショー・ダンサー、マユミ、17歳の語り。「250CCぐらいの軽いやつです。彼は、ライダーです。あの鉄骨を編み上げた巨大な球形の檻の中を、気の遠くなるようなスピードで縦横に疾駆するんです。平地じゃない、球の内側です。十八メートルもある湾曲した内壁を、遠心力を利用して一気に頂上まで駆け上り、炎をまき散らすように走り下り、彼の髪はさかだち、そのとき、鋼鉄の太陽は、生命を得て輝きだすんです。メットなんか彼はかぶりません、あたしたちがお客さまにさしあげるのは、死との格闘です。あたしたちは貧しい。ボリショイのように、豪勢な装置や、芸をしこんだ熊だの、きらびやかな衣裳をつけた大勢の踊り子だの、鞭一本で命令に従う虎や象だの、そんなお金のかかるものでお客さまの目をたのしませることはできません。そのかわり、あたしたちは、命がけの芸をさしあげます。ブランコ乗りはネットをはらないし、綱渡りは命綱を腰につけません。泥くさくても、あくどくても、それが、あたしたちにできる精一杯のおもてなしなのです。あなたがたは、昔のローマの貴族のように、自分は安全なところにいて、他人の死闘をたのしむことができます。こんな贅沢なたのしみって、ほかにあるでしょうか」。
「彼とのタンデム(二人乗り)は、何てすばらしかったことでしょう。あたしたちは、一つの体、一つの心となって、とばすのでした。そのあとでのセックスは、最高でした。彼が、いろんな女の人と寝ていることは知っていました。彼は、よく、ゆきずりの年上の女に誘われて、それで小遣いをかせいだりしていました。それは、かまわなかったんです。もちろん、いやだったけれど、でも、彼をあたしに縛りつけておくことはできないとあきらめていました。それに、あたしたちは、しょっちゅう旅してまわっているんです。彼が女の人にお金で買われたって、その場かぎりの商売です。あたしは、いつも、彼といっしょです。でも、あの女だけは、違いました。あたしはそれを感じました」。
マユミと、スピード・レーサーへの夢が叶わず苛立つ彼は、それぞれが、互いに知らぬ殺人の仕掛けを施してから、タンデムの出番に臨むのです。