榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

友情の書、そして、ビジネスパースンの組織における苦闘物語・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1561)】

【amazon 『友情について』 カスタマーレビュー 2019年7月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(1561)

千葉・柏で開催中の柏ねぶたパレードを見物しました。因みに、本日の歩数は10,738でした。

閑話休題、『友情について――僕と豊島昭彦君の44年』(佐藤優著、講談社)は、佐藤優が、埼玉県立浦和高校1年時の同級生・豊島昭彦の苦難に満ちた人生を綴ったものです。59歳で膵臓がん第4ステージと宣告されながらも、生きることに真剣に向き合っている豊島に対する友情の書なのです。

と同時に、ビジネスパースンの組織における苦闘物語として読むこともできます。豊島は、一橋大学を卒業したものの、就職した日本債権信用銀行が経営破綻、救世主として乗り込んできた外資系投資ファンドの外国人上司との軋轢、転職したゆうちょ銀行の上司との齟齬――が生々しく描かれているからです。

●「言葉が通じない」上司とどうつきあうか、●ひたすら耐えるか、人生経験だと前向きに考えるか、●大トラブルのときに現れる人の本性、●4年間の嵐のあとに、●容赦ないリストラに抗う、●「お目見え以下」の存在に――耐え忍ぶ、●3・11と指名解雇、●50代で退社・転職を決意するとき、●転職先で思い知った「異文化の壁」、●新しい上司は「やる気を殺ぐ天才」だった、●忍耐が臨界を超えた日。これら豊島の疾風怒濤の日々は、実話だけにビジネス小説を凌ぐ迫力に満ちています。

「(直属の上司から)毎日毎日お前はダメだと言われ続けてそれでも正常な精神状態を保てる人間は、よほど精神が強い人間か、逆に極端に鈍感な人間だけだ。豊島君は次第にプライドと自信を失くしていった。そんなふうにして豊島君の士気(モラール)を下げても、ゆうちょ銀行にとってプラスになるわけがない」。

「自分の持ち時間が限られていることを豊島君は自覚しながらも、一日でも長く生きようと努力している。私は、豊島君の高校1年のときからの親友として、最期の瞬間まで伴走したいと思っている」。

友情について、ビジネスパースン生活について、そして、人生について、考えさせられる一冊です。