榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

イギリスは、産業革命ではなく、「手数料資本主義」によってヘゲモニー国家となったのだ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1677)】

【amazon 『逆転のイギリス史』 カスタマーレビュー 2019年11月19日】 情熱的読書人間のないしょ話(1677)

散策コースの紅葉を楽しみました。因みに、本日の歩数は11,714でした。

閑話休題、「逆転のイギリス史――衰退しない国家』(玉木俊明著、日本経済新聞出版社)は、イギリスの経済史がテーマであるが、著者独自の見解が目を惹きます。

「本書のフレームワークとして採用したのは、アメリカの社会学者イマニュエル・ウォーラーステインの『近代世界システム』である。ウォーラーステインによれば、15~16世紀にヨーロッパで形成された経済システムが、やがて世界中を覆うようになった。その過程で、3つのヘゲモニー国家があった。17世紀中葉のオランダ、19世紀後半から第一次世界大戦までのイギリス、第二次世界大戦直後からベトナム戦争頃までのアメリカである。ヘゲモニー国家は、工業、商業、金融の3部門で他を圧倒する経済力のある国である。この3部門の順番で興隆し、衰退する。したがって、その寿命は短い。ウォーラーステインは『ヘゲモニー』という言葉の意味を経済面だけに限定して用いており、本書もそれに従う。とはいえ、ウォーラーステインのようにヘゲモニー国家を定義するなら、現実の経済から遊離したものになってしまう。工業、商業、金融の順にヘゲモニー国家の経済が興隆し衰退するというのは、現実的な考え方ではない。むしろヘゲモニー国家とは、経済というゲームに従事する時に、『何が正しいのか』を決定できる国だとする方が現実的である。『正しい』ことを決定する国がヘゲモニー国家であり、すべての国々はそれに従わなくてはならない。そのようなシステムが15~16世紀の北西ヨーロッパで誕生し、世界中に広まっていったのである」。

著者の「イギリスは手数料資本主義の国」という主張は、刺激的です。「1870年頃から、イギリスは工業生産高で他国に追いつかれ始め、20世紀になると世界の工場としての地位を、ドイツやアメリカに譲った。だがその一方で、イギリスは世界最大の海運国家であり、この2国の工業製品の少なくとも一部はイギリス船で輸出された。さらに、世界の多くの海運会社は、イギリスの保険会社ロイズで海上保険をかけ、ロイズは海上保険における再保険の中心でもあった。再保険市場の利率と海上保険の利率をある程度決定した。だからイギリスは、たとえ工業生産では世界第1位ではなくなったとしても、何も困ることはなかった。むしろ、世界の他地域の経済成長が、イギリスの富の増大につながったのである」。

「イギリスは世界最初の工業国家であった。だが、イギリスがヘゲモニー国家となったのは、イギリスが世界金融の中心となり、ほとんどの国際貿易の決済がイギリスの金融市場を通じておこなわれるようになったからである。イギリスは、電信(網)によって、世界の情報の中心となった。イギリスは、いわば『情報の帝国』になったのである。そのため、金融の中心になり、世界の人々は、イギリス流の経済の運営方法=ゲームのルールに従わざるをえなくなったのである。たしかに、イギリスは『世界の工場』ではなくなっていった。しかしもしイギリスが『世界の工場』のままであり、手数料資本主義を発展させなければ、イギリスはきわめて大きな収入源を失い、ヘゲモニー国家にはなれなかったであろうし、ゲームのルールを決定することもできなかたであろう。他国が工業化を発展させ、イギリスはその工業製品の輸送の少なからぬ部分を担い、国際貿易の決済を担うことができたからこそ、すなわち、イギリスは他国の工業化を利用したからこそ、ヘゲモニー国家になれたのである。産業革命によってヘゲモニー国家になったわけではない」。