琳派の全体像を俯瞰できる最高の入門書・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2090)】
珍しく我が家の庭を訪れたジョウビタキの雄の撮影に、残念ながら失敗。2羽のメジロが入れ替わり立ち替わり、餌台にやって来ます。ヒヨドリも顔を見せました。
閑話休題、『琳派超入門――教えてコバチュウ先生!』(小林忠著、小学館)のおかげで、琳派の全体像を俯瞰することができました。
「琳派という美術の特色は、華やかなデザインとくもりない明るさ、清らかさ、そして身近な親しみやすさにあります」。
本書の解説は、「京の都に花開いた俵屋宗達と尾形光琳の琳派、それから酒井抱一や鈴木其一によって異種の果実を実らせた江戸琳派、さらには明治以降の近現代に受け継がれた琳派伝統のその後にも」及んでいます。
「琳派は豊かな町人=町衆たちの美意識に育てられた文化なんです」。著者は、単純で明快で清らか――これが琳派だと述べています。
「宗達は桃山的なおおらかなエネルギーを発散できる、そういう存在だったと思います」。宗達の大胆な構図、ユーモラスな表情――琳派はここから生まれたのです。
「(本阿弥)光悦という武家でも公家でもない自由な身分の都の文化人が、宗達という類まれな美的センスをもつパートナーを見いだして、美しい料紙装飾の伝統を踏まえ、絵画的なデザインの書画というものでコラボできた。ふたりの作品が、大変幸せな証として今に伝わっているんです。だから『宗達下絵光悦書』の作品を見ると、私は本当に豊かな気持ちになるんです。ふたりが一緒につくりあげたこうした作品は、千年近く都が蓄えてきた、内熟した文化の上澄みとして生まれたものだから、そんなふうに感じるのでしょうか」。
「琳派の誕生は俵屋宗達と本阿弥光悦によってなされたものですが、その後の琳派の発展は、尾形光琳のことを抜きには語れません。なんといっても『琳派』の『琳』は光琳の『琳』なんですから」。華やかな発色、見事な意匠性を特色とする光琳は、日本の絵画史上、最も際立つ存在といっていいと高く評価しています。
「抱一は琳派に、江戸の文化人らしい俳諧的な詩情を植え込んだんです」。そして、抱一の弟子・其一は、近代絵画への萌芽を感じさせる奇才だったのです。
著者のアドヴァイスが心に沁みます。「模写するとか真似ることをネガティブにとらえてはいけません。『真似る』は『学ぶ』。そうして日本美術は世界に誇る多様で美しいものになったんです」。