張り巡らされたAIに常時監視され、強制収容所に放り込まれるウイグル人たちの地獄の日・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2507)】
シロハラ(写真1、2)をカメラに収めました。セイヨウツゲ(ボックスウッド)の褐色の葉が陽に輝いています。
閑話休題、『AI監獄ウイグル』(ジェフリー・ケイン著、濵野大道訳、新潮社)からは、身の毛がよだつ新疆ウイグル自治区のウイグル人たちの理不尽かつ悲惨な実態が生々しく記されています。
「本書の主人公である『メイセム』は、私が2018年10月にトルコの首都アンカラで出会った若いウイグル人女性の仮名である。2018年10月から2021年2月までのあいだ、私は14回にわたって彼女にインタビューを行なった」。
「2017年以降、推定180万人のウイグル人、カザフ人、そのほかの主としてイスラム系少数民族の人々が、『思想ウイルス』や『テロリスト思考』をもっていると中国政府から糾弾され、地域全体にある何百もの強制収容所に連行された。・・・(高校などの)一般的な建物が拷問、洗脳、教化のための拘置施設に変わった。それは第2次世界大戦中のホロコースト以来、史上最大規模の少数民族の強制収容所だった」。
「たとえ収容所送りを免れたとしても、新疆での日々の生活は地獄だ。あなたがウイグル人の女性なら、政府から派遣されてきた見知らぬ人物の隣で毎朝目覚めることになるかもしれない。その男性は、収容所に連行されたあなたのパートナーの代わりを務める人物だ。毎朝の出勤まえにこの監視員は、忠誠心、イデオロギーの純粋さ、共産党との友好関係という国家の美徳をあなたの家族に教え込む。監視員はさまざまな質問を投げかけてあなたの『成長』をチェックし、政府が呼ぶところの『心のウイルス』や『3つの悪』(テロリズム、分離主義、過激主義)に『感染』していないかをたしかめる」。その後、どこへ行っても、AIに監視され続けます。
「あなたが女性の場合、毎日正午、政府が提供する経口避妊薬を飲むことを求められる。それでも、あなたはまだ幸せなほうだ。政府は女性の同僚たちをたびたび地元の診療所に呼びだし、強制的に不妊手術を受けさせている。少子化が発展につながると政府は主張し、少数民族の出生率を下げようと試みているのだ」。この後も、AIの監視は執拗に続きます。
「夕食のあと夜のニュースを見おわると、居間の隣に設置された政府の監視カメラのまえで、政府の監視員とともにベッドに横になる。なんとか眠りにつけますように、とあなたは願う。彼にはベッドのなかであらゆることをする権限がある、とあなたはふと思いだす。なんといっても、その監視員は政府から派遣されているのだ。誘いを断われば、嘘の主張をでっち上げられて逮捕され、あなたは強制収容所送りになるかもしれない」。
強制収容所内での目を背けずにはいられない残虐な実態についても、多数の実例に基づき克明に描写されています。
「2014年から2016年のあいだに中国は、テロ対策の戦術をかつてない水準の残虐なものへと上昇させていった。解決策として利用されたのは、むかしながらの高圧的な取り締まりと『コミュニティー型警察活動』の取り組みだった。後者は簡単にいえば、家庭、学校、職場で密告者を募るという作戦だ。しかしテロの脅威を完全に潰すためには、それでも充分でないと政府は感じていた。2016年8月、陳全国という実力者が新疆ウイグル自治区の共産党委員会書記に就任し、地域の最高指導者になった。彼は新しいテクノロジーを活用し、住民への監視と支配を強めていった。たとえば、マスデータ(大規模データ)を使った『予測的取り締まりプログラム』の導入によって、罪を犯しそうだとAIが予測した容疑者を拘束できるようになった。陳の指示によって何百もの強制収容所が開設された。これらの収容所は正式には『拘置センター』『職業訓練センター』『再教育センター』などと名づけられた。この地域に住む1100万人のウイグル人のうち、それらの施設に収容された人数は2017年までに150万人に膨れ上がった。中国が目指したのは、ひとつの民族のアイデンティティー、文化、歴史を消し去り、何百万人もの人々を完全に同化させることだった。こうして、中国は完璧な警察国家を作り上げた」。
本書によって、私たちは、新疆ウイグル自治区が世界で最も高度な監視ディストピア(暗黒郷)社会に変貌を遂げている恐るべき事実を知ることになるのです。