榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書のおかげで、読んでみたい本がたくさん見つかりました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2095)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年1月7日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2095)

2羽のシジュウカラと2羽のメジロは、我が家の庭の餌台の常連です。

閑話休題、『言葉である。人間である。――読書術極意』(藤沢周著、言視舎)は、なかなか魅力的な書評集です。藤沢周がそこまで言うなら読んでみようという本がたくさん見つかりました。

●若松英輔『生きる哲学』――。
「和辻、須賀敦子、孔子、原民喜、フランクル、井筒俊彦などを通し、ほんものの思索とは何かを探った、美しく深度のある書物」。

●谷崎潤一郎『刺青・秘密』――。
「初期の悪魔主義的作品群は、頽廃美とエロス、タナトスが行間から立ちのぼり、クラクラと媚薬が効いてくる」。

●木下昌輝『宇喜多の捨て嫁』――。
「生死の瀬戸際の『無想の抜刀術』、その技で母までも殺めたか、宇喜多直家。業であろうか、血膿爛れる病に伏せながら、自らの娘らを戦のために捨て駒にする非情。残酷、冷徹、地獄、狂気・・・それぞれの連作短篇の底にあるモチーフの強さとともに、筆致が恐ろしいほどの迫力」。

●古橋信孝『文学はなぜ必要か』――。
「古事記からSFの伊藤計劃まで、その時代と社会の深層から発酵して生まれた文学の面白さを、絶妙な語り口で教えてくれる」。

●中野好夫『悪人礼賛』――。
「悪には文法があり、善意こそ無文法であり、無法であると断言する。成熟するとはこういうことか。軽妙洒脱な文章の奥に、社会や時代や平和を考えるためのヒントが満載」。

●長谷川郁夫『編集者 漱石』――。
「『え? こんな角度から!』の驚きのアプローチ。夏目漱石がじつは日本近代文学史上、最初かつ最高の編集者だったという視点から、明治・大正時代に沸騰した才能の数々を描き出した」。

●森三樹三郎『老子・荘子』――。
「禅や浄土宗などに大きな影響を与えた老荘思想の宇宙観を検証した好著。荘子の『無限なるものと完全に一体となり、形なき世界に遊べ』の言葉など、座右の銘にしたいではないか。最も豊かで贅沢なる時空を、この現世に見出す術がここに」。