榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

夏王朝は、古代中国の初期王朝だったのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2138)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年2月19日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2138

カワセミの雌(写真1~5)、ヤマガラ(写真6)、コゲラ(写真7)、ツグミ(写真8)、ヒヨドリ(写真9)をカメラに収めました。

閑話休題、「読書クラブ 本好きですか?」の読書仲間・矢島直樹氏から薦められて、『神話から歴史へ――神話時代 夏王朝』(宮本一夫著・講談社学術文庫)を手にしました。

中国の古代王朝の歴史は、殷、周、秦、漢と変遷していくが、殷の前に夏王朝が実在したのか、実在したとして、夏王朝は王朝と呼べる内実を備えていたのか――この私の疑問に、本書は明快に答えてくれました。

「(新石器時代終末期の)各地では、それぞれの地域で巨大な建造物が建設されるような、古代国家に近い強力な王権をも思わせる首長権の卓越性あるいは物質文化の発達というものが見られた。こうした段階を初期国家と呼ぶ研究者もおられるが、私はこの段階を初期国家と呼ぼうとは思わないのである。・・・新石器時代終末期には、農耕社会各地域で首長権の絶対化が認められるものの、その社会発展はそこで潰えているのである。決してこれまでの社会単位を超えてさらに首長権が確立するということは存在しない。あるいは地域社会内部での首長権も一時的には巨大建造物を建設できるほどのものに達しているけれども、決してその系統性を維持した首長権が同じ氏族内で維持されることはなく、不安定なあり方しか現象的には示していないのである。これをもって果たして初期国家段階といえるのであろうか。やはり首長制社会段階にとどまっているといわざるを得ないのである」。

「問題は新石器時代の次の段階、これまでの伝統的な時期区分でいう青銅器時代開始期である二里頭(にりとう)文化段階をどう評価するかである。この段階は、文献史料でいう夏王朝期にあたり、文献史料でいう夏王朝とは、この二里頭文化の政治勢力を指すであろう。しかし、文献史料でいう夏王朝が二里頭文化であっても、この社会が歴史的な発展段階における初期王朝と呼ぶべき段階にあたるかどうかには慎重であらねばならない。・・・この段階は、新たな社会組織の組織原理が形成され、かつ他地域社会に由来する社会維持装置を吸収しているところに歴史的な画期が認められるものの、その社会維持装置を使った社会組織の範囲は、ほぼ以前からの地域社会の範囲を越えるものではなかった。・・・いわば政治的な広がりというものには、限界があったのである。その点に注目するならば、強力な王権が確立するという政治的な社会進化を果たしているわけではない。ここに二里頭社会の社会進化上の限界があったのである。二里頭文化期は王権の形成期であり、私は初期国家形成期あるいは萌芽期と位置づけたいのである」。

すなわち、著者は、本格的な初期国家の段階は、紀元前1600年頃に誕生した殷王朝から始まると主張しているのです。