大切な人を亡くしたとき、大きな慰めを与えてくれる詩画集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2484)】
【読書クラブ 本好きですか? 2022年2月4日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2484)
ソシンロウバイ(写真1~4)が芳香を漂わせています。
閑話休題、詩画集『詩ふたつ』(長田弘著、グスタフ・クリムト画、クレヨンハウス)は、長田弘の「花を持って、会いにゆく」と「人生は森のなかの一日」という2つの詩と、グスタフ・クリムトの絵で構成されています。
●花を持って、会いにゆく――
「春の日、あなたに会いにゆく。あなたは、なくなった人である。どこにもいない人である。 どこにもいない人に会いにゆく。きれいな水と、きれいな花を、手に持って」。
「どこにもいない? 違うと、なくたった人は言う。どこにもいないのではない。 どこにもゆかないのだ。いつも、ここにいる。歩くことは、しなくなった」。
「死ではなく、その人が じぶんのなかにのこしていった たしかな記憶を、わたしは信じる」。
●人生は森のなかの一日――
「夜の濃い闇をあつめて、森全体を、蜜のような きれいな沈黙でいっぱいにする」。
「森には、何一つ、余分なものがない。何一つ、むだなものがない。 人生も、おなじだ。何一つ、余分なものがない。むだなものがない」。
「そのとき、ふりかえって 人生は森のなかの一日のようだったと 言えたら、わたしはうれしい」。
「あとがき」の「亡くなった人が後に遺してゆくのは、その人の生きられなかった時間であり、その死者の生きられなかった時間を、ここに在るじぶんがこうしていま生きているのだという、不思議にありありとした感覚」という一節が胸に沁みます。
大切な人を亡くしたとき、大きな慰めを与えてくれる一冊です。