榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

自分の好きなことをして、ちゃんと食べていけている人たちの実例集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2875)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2875)

朝焼け(写真1)、シロハラ(写真2)、ツグミ(写真3)、ムクドリ(写真4)、セグロセキレイ(写真5)、ハクセキレイ(写真6)、カワラヒワ(写真7)、アオジの雌(写真8)をカメラに収めました。ウメ(写真9~14)、シダレウメ(写真15、16)が芳香を放っています。因みに、本日の歩数は14,147でした。

閑話休題、『好きなことして、いい顔で生きていく――風変わりな街ポートランドで、自分らしさを貫く15の物語』(東リカ著、イカロス出版)に登場する16人は、実在の、実に風変りな人物ばかりです。本書は、自分の好きなことをして、ちゃんと食べていけている人たちの実例集です。

個人的に、とりわけ興味深く感じたのは、「プラトニックな抱擁を販売するプロのカドラー、サマンサ・ヘス」のケースです。抱きしめることで救われる人がいる――。「抱擁」をビジネスにした女性の奮闘記です。

「『カドル・アップ・トゥ・ミー』の創業者、サマンサ・ヘスは、顧客に『カドル(愛情を込めて抱きしめる。抱擁)』を提供することで対価を得るプロの『カドラー』だ。カドルとは、ハグと似ているが挨拶ではなく、愛情を示したり、安心させるために我が子や恋人など特別な相手を包み込み、ピッタリと抱き合うイメージの言葉である」。

著者もこのサービスを体験してみたが、「初対面の人と抱き合うなんて・・・と抵抗を感じるかもしれないが、思い切って身を任せてしまえば、自分のために側にいてくれるサマンサの体温や心臓音に、驚くほどリラックスできた」。

「弱いところを見せられる相手のいない若い男性、彼氏の裏切りから回復できずスキンシップに抵抗のある女性、パートナーと死別して何十年も人と触れ合っていないシニア、ただ抱擁されたいトランスジェンダー女性など、幅広い年齢、ジェンダー、人種、社会的地位などの多様な顧客がカドルを求めてサマンサの元を訪れる。サマンサの顧客の大半が、なんらかのトラウマや障害を抱え、無防備に心を開くこと、人と触れ合うことができずに暮らしている。最初は話をするだけで、実際に触れ合うまでに長い時間がかかる人もいる。セラピーではないので、カドラーが顧客の悩みにアドバイスをすることはない。意見を挟まずにただ話を聞く、決して否定せず、すべてを受け止める安全な場所を提供するだけだ。けれども、何も言わずに抱きしめてくれる相手こそ必要な時があるのだ。『人と触れ合わなくても、誰かに認められなくても生きてはいけるが、生き生きするのは難しい。そして、自分を幸せにできるのは、自分だけ』とサマンサ。顧客がカドラーに受け止めてもらうことで、自分の価値を認められるようになり、人との関係においても一歩踏み出せるようになれば晴れて『卒業』。サマンサは、『自分のサービスが不要になるのが理想だなんて、最悪のビジネスモデル』と苦笑しつつも、どこか誇らしげだ」。