榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

明智光秀謀反の真相、鼠小僧は義賊にあらず、西郷隆盛の闇、坂本龍馬の恋人たち――日本史は面白いぞ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2885)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月11日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2885)

千葉・松戸の「ふれあい松戸川」で、行き合ったバード・ウォッチャーたちのアドヴァイスのおかげで、遂に、ベニマシコの雄(写真1、2)の撮影に成功。ベニマシコの雌あるいは雄の若鳥(写真3、4)、囀っているウグイスの雄(写真5)、カシラダカ(写真6)をカメラに収めました。我孫子の手賀沼では、地元のバード・ウォッチャーの情報のおかげで、クイナ(写真7~10)を撮影することができました。バン(写真11~14)をカメラに収めました。シデコブシ(写真15、16)が咲いています。因みに、本日の歩数は14,863でした。

閑話休題、『日本史を暴く――戦国の怪物から幕末の闇まで』(磯田道史著、中公新書)で、とりわけ興味深いのは、●明智光秀登場の黒幕、●光秀謀反の真相、●江戸の買春価格、●鼠小僧は義賊にあらず、●西郷隆盛の闇、●坂本龍馬の恋人たち――です。

●明智光秀登場の黒幕
「明智光秀はその能力の高さで化け物といってよい。このモンスターを登場させ、歴史を変えてしまったのは、他ならぬ細川藤孝であったろう。・・・藤孝は光秀の人物を見抜き信長に送り込んだ。・・・光秀は、(藤孝が担ぐ足利義昭の)京都奪還作戦のため、藤孝が信長に送った連絡役、エージェント的な存在であった。というのも、光秀は外交に向いていた。なにしろ家族まるごと容姿がいい。フロイスは光秀の家族を『ヨーロッパの王侯貴族のようだ』と書く。・・・そのうえ、人を信用させる術を心得ていた」。

●光秀謀反の真相
「信長はするどい。光秀の忠義はみせかけで、本当は主君よりも自分を輝かせたい男なのではないか。そう見抜いたふしがある。本能寺の変の直前、光秀と信長は『密室』で言い争った。それは『二人だけの間での出来事』であったと宣教師フロイス『日本史』は記す。光秀が口答えしたので、信長が『怒りをこめ、一度か二度、明智を足蹴にした』。この時、何で言い争ったのかはわからないとフロイスはいう。近年見つかった証拠でいえば、四国の戦国大名・長宗我部氏への外交方針であったかもしれない(『石谷家文書』)。実は細川家では、本能寺の変後、光秀謀反の理由を明智家家老の息子『斎藤佐渡殿』から聞き出している。斎藤はこう証言した。『(武田が滅亡し一族の)穴山梅雪が信長に降参した。(穴山の口から光秀の武田への)内通(内々逆意)が露見するのを恐れ、取り急ぎ謀反心を起こされた』(『綿考輯録』)。光秀は信長の寵愛に陰りがみえ、不安を覚えており、信長に疑われて成敗される恐怖を感じていた可能性がある」。

「(本能寺の変を知り)細川親子は仰天した。次いで光秀からも使者がきた。『信長はたびたび我(光秀)に面目を失わせ、我儘のふるまいのみあるに付き、(信長・信忠)父子ともに討ち滅ぼし鬱憤を散じた。軍勢を召し連れ早々に上洛あって何事もよくよく計らってもらいたい。摂津国は幸い欠国(無主国)なので先ずは知行(領有)あるべし』という内容であった」。

●江戸の買春価格
「(大和高田<奈良県>の薬種商・喜右衛門の『関東一見道中記』には)『(岡崎の旅籠の)女郎分六百文』とあるから、ここでは現在の3万円ほどで女性の性を買ったのだろう。・・地方の旅籠の女郎の相場は600文であったらしい。この道中記では潮来・鹿島(茨城県)が『女郎壱人六百文ずつ』とある。戸塚も『女郎沢山也』とある。道中記を書いたこの男、本当に女好きである。江戸に着くと早速『舟に乗り吉原に遊びに行』っている」。

●鼠小僧は義賊にあらず
「発見史料(『御屋舗へ忍入候盗賊一件徴』)には、鼠小僧が、いつ頃、どこの屋敷の、どの場所で犯行に及んだかの膨大なリスト(風説書)がついており、『北御役所(北町奉行所)へ差出ス』とある。・・・この史料が正しいとすれば、96%は(大名屋敷の)主に女性の居住空間(奥向・長局)を狙ったことになる。・・・鼠小僧にはとび職の経験があった。女子便所の上に潜み屋根をつたったのであろう。便所で用を足す女や長局で寝息をたてる武家屋敷の高貴な女を闇からじっとのぞいていたに違いない。これほど執拗に女の部屋を狙うのは、鼠小僧が金だけでなく、武家の女の部屋に入ること自体に快楽を感じていた可能性を考えねばなるまい。・・・『盗金は悉く悪所場・盛場にて遣い捨て』とあり『酒食遊興又は博奕』に消え、庶民にバラまかれたわけではない。こんな鼠小僧が、なぜ『義賊』と呼ばれたのか。その背景には江戸庶民の権力者への反感があったろう。武家屋敷がやられる時の庶民の快感である」。

●西郷隆盛の闇
「弱い者の気持ちになれる。ここが西郷の最大の魅力であった。さらにはユーモアと明るさが彼の持ち味でもあった。だが一方で西郷は一度『謀略』をはじめると、暗殺、口封じ、欺瞞、なんでもやった。恐ろしく暗い闇を抱えた男でもあった。歴史家は、この西郷の翳のある横顔も避けずにみていくべきものと考える。善悪に振れ幅のあるこの絶対値の大きさこそが西郷の人物的魅力の泉である」。

●坂本龍馬の恋人たち
「龍馬初恋の人は平井加尾。土佐で龍馬と結ばれるはずだったが二人はタイミングを逃した。・・・その後、龍馬は千葉佐那、楢崎龍と交際し、加尾とは結ばれなかった。龍馬はお調子者。千葉佐那のほうが『顔かたち平井(加尾)より少しよし』と姉の乙女に手紙で書き送ったのが残っている」。