ウクライナ侵攻の張本人、ウラジーミル・プーチンについての興味深い分析・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2896)】
東京・新宿の新宿御苑では、オオシマザクラ、ソメイヨシノなど、さまざまなサクラが咲き競っています。WBC決勝戦で日本がアメリカに勝利! 因みに、本日の歩数は13,428でした。
閑話休題、『この世界の問い方――普遍的な正義と資本主義の行方』(大澤真幸著、朝日新書)で、とりわけ興味深いのは、ウクライナ侵攻の張本人、ウラジーミル・プーチンについての分析です。
「プーチンは、ヨーロッパへの劣等感やルサンチマンをもっている。・・・プーチンもまた、西側諸国と友好的な関係を築き、(ピョートル大帝やエカチェリーナ2世といった)啓蒙専制君主と同じようなことをすべきではないか。だが、プーチンにはそれができない。そうすべきではない、と彼は考えているだろう。どうしてなのか。ロシアが、西側の仲間に加わったとしたらどうなるかを想像してみるとよい。ロシアは、西側諸国のヒエラルキーの底辺に置かれることになるだろう。ロシアは、ドイツやフランスよりはるかに格下の国として扱われるに違いない。・・・ゆえに、西側諸国のグループに参加すれば、ロシアは、精神的にも政治的にも、従属的な地位を受け入れざるをえない。ロシアは、格下の周辺国と見なされた上に、何より、自らの政治的な意思を実現することはできず、常に(西側仲間の)有力国の決定に従わざるをえなくなるだろう。ロシアとしては――少なくともプーチンは――、こんな屈辱的な地位を受け入れることはできない。プーチンの望むのは、ロシアを『大国』とすることだ。大国とは――プーチンにとっての大国とは――、他国に依存せず、他国の意向に配慮せず、自らの運命を自ら決定できる国家である」。
「プーチンのリアリズムは、ロシアが単独でアメリカと対抗できるはずがない、ということを理解しているに違いない。ロシアは、適切な他国と組むことで、はじめて、アメリカと対等にわたりあうことができる。・・・というわけで、プーチンは現在、仕方がなく、中国に接近しているのだ。別に中国が好きなわけではない(どちらかと言えば嫌いである)。内心、中国を、アジアの野蛮な国として見下しているのではないか。しかし、今は、プーチンのロシアは、アメリカとの間に力のバランスを作るために、中国と友好的な関係があるかのようにふるまわなくてはならない」。
「ロシアにとっての『ほとんどわれわれ』、つまりウクライナでさえも、ロシアではなく、ヨーロッパを選んだ。最も親密な者でさえも、去っていく。プーチンの『大国』への過程は、最初の一歩さえも踏み出せなかったことになる。プーチンのロシアは、最も簡単なハードルさえも越えられなかったのだ。ウクライナにさえも影響を及ぼすことができないならば、アメリカと拮抗しうる勢力圏など絶対に確立できない。だから、ロシアは、力ずくでウクライナを屈服させようとしている。しかし、そのようなやり方でしかウクライナを従属させることができないということそれ自体が、プーチンの野望が挫折していることの、この上ない証明である。ウクライナに慕われていないからこそ、武力が必要になっているのだから。大国だから軍事侵攻できるわけではない。大国ではないから、そうしているのだ」。
プーチンはヨーロッパへの劣等感やルサンチマンをもっているとの指摘に接し、目から鱗が落ちました。