榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

都市活性化成功への3つの鍵――流山市の場合・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2897)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年3月23日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2897)

昨日、訪れた東京・新宿の新宿御苑の続き。群生するハナニラ(写真1~4)、チユウキンレン(写真5)、ヒマラヤスギ(ヒマラヤシーダー。写真6)、カエルの幼生(オタマジャクシ。写真7)をカメラに収めました。温室では、ヒスイカズラ(写真8)、ベニバナハゴロモノキ(写真9)が咲いています。

閑話休題、私は千葉県の柏市民だが、我が家の向かいは流山市立小学校ということから、近年、流山市で学童が急増していること、流山市が住みたい町の上位にランクされていることなどを、肌で感じています。『流山がすごい』(大西康之著、新潮新書)を読んで、なぜ、平凡な地方都市である流山市が都市活性化に成功することができたのか、がよく分かりました。そして、この方法論は都市の活性化に止まらず、さまざまな組織の活性化にも生かせることに気づきました。

その成功への鍵は、3つにまとめることができます。
①明確な目標を持ったリーダーと、それを支える仲間たち
②目標達成に向けた的確な戦略・戦術
③達成した目標を維持・発展させるための継続策

「(2016年)日本の共働き子育て世帯の多くが『保育園難民』と化していた。千葉県の北の端に位置する流山市は、その10年前から子育て世代の支援に着々と手を打っていた。2010年、市内に17ヶ所しかなかった保育園は12年後の2022年、100ヶ所に増えた。2003年に流山市長になった井崎(義治)が『共働き子育て世代の基本的インフラとして保育園を整備せよ』と号令をかけたからだ。2021年に『待機児童ゼロ』を達成した。ここまで急激に保育園を増やすと、当然、問題になるのが保育士の確保だ。流山市は十分な人数の保育士を揃えるため、保育士を厚遇することにした。・・・こうして『保育の楽園』になった流山市には保育園難民となった首都圏の子育て世代が一斉に押し寄せた。その結果が現れたのは2016年。総務省が発表した人口動態調査で、流山市の人口増加率(2.49%増)が全国の市の中でトップに躍り出たのだ。流山市はその後も、毎年、全国の市の中で『人口増加率首位』を維持し続け、2021年まで6年連続の首位を達成した」。

「『母になるなら、流山市。』。こんなキャッチフレーズを掲げる流山市は、自分たちのような子育て世代に手厚い優遇政策を実施している。・・・河尻も尾崎も手塚も、子供を産むまでは東京でバリバリ働いてきたキャリアウーマン。子育てをきっかけに流山市を選び、そこで新しい生き方を手に入れた。女性だけではない。50代で会社をリタイアし、流山市で有機農業を始めた男性。プロのサッカー選手になる夢を追いかけた後、流山市初のプロ・サッカーチームを作ろうとしている若者。つくばエクスプレスの開通で都心から25分の近さを手に入れた流山市では、行政が先進的なグランドデザインを描き、そこに夢を持つ人々が集まって、新しい街づくりが始まっている。6年連続の『人口増加率全国792市中1位』はその結果に過ぎない。河尻は言う。『自分たちが望むことを、誰かにお願いするのではなく、自分たちで実現しようとする。シビック・プライド(市民としての誇り)がこの街の一番の魅力です』」。

「流山市には日本の自治体で唯一の『マーケティング課』がある。井崎の肝煎りで作られた『流山の可能性を引き出す街づくり』の実働部隊だ。・・・▶流山の強みをどう活かすか? ▶流山の弱みをどう克服するか? ▶どのように機会を利用するか? ▶どのように脅威を取り除くか? こうやって問を立てれば、何をすべきかが見えてくる。流山の強みとは、例えば都心に比べて自然が豊かなこと。弱みとは、街としての知名度が低くブランド力がないこと。最大の機会はつくばエクスプレスが開通して都心との距離が縮まること。脅威は少子高齢化による財政危機と沿線都市との競合だ」。

「市は市街化調整区域だった流山インター周辺の江戸川河川敷を積極的に市街化区域に編入していき、やがて開発可能な土地は100万平方メートルを超えた。かつての耕作放棄地は、ラブホテル街になることもなく、緑に囲まれた先端物流拠点に生まれ変わった。これは流山市に『物流』という新しい産業が生まれたことを意味する。・・・日本GLPとDPLが東京ドーム30個分の敷地に植える木は20万本以上。市長の井崎は言う。『木が大きく育てば、やがてあの場所は日本で最初の<森の中の物流センター>になるでしょう』」。