多様な価値観を表明し、受け入れるだけの気概と道理を持ったリベラルを確立しよう・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3203)】
自然観察仲間の樫聡さんから、住宅街の中にありながら里山環境が保持されていると教わった千葉・柏の「下田の杜」を訪れ、静寂と清浄な空気を満喫することができました。ソシンロウバイ(写真7、8)、セイヨウアブラナ(ナノハナ。写真9、10)が咲いています。シナマンサク(写真11)が蕾を付けています。ハシボソガラス(写真12)をカメラに収めました。我が家の庭師(女房)から、庭の片隅でニホンズイセン(写真13)が咲いているわよ、と報告がありました。因みに、本日の歩数は11,955でした。
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閑話休題、『日本の保守とリベラル――思考の座標軸を立て直す』(宇野重規著、中公選書)は、日本の保守とリベラルを考えるヒントを与えてくれます。
「本書では明治憲法体制の確立者であると同時に、自ら政党を組織した伊藤博文から始まる系譜を、陸奥宗光、原敬、西園寺公望、牧野伸顕へとたどり、戦後もその流れを汲む吉田茂の『保守本流』に着目している。その意味では、きわめて微弱とはいえ、近現代日本において一定の『保守』を見出せるというのが、本書の仮説となる。『リベラル』についても、福沢諭吉から石橋湛山、清沢洌、さらに戦後においても丸山眞男らにおいて、日本における『リベラリズム』の重要な達成が見てとれる。仮にそれが『稜線』であったとしても、現代日本にとっても大きな意義を持つ歴史的蓄積をそこに見出すことができる。このことを本書は強調していきたいと思う。ある意味で、政治家ばかりがいて思想家に乏しい『保守』に対し、傑出した思想家はいても政治勢力としては弱い『リベラル』ということになり、そこに非対称を見出すことも可能である。とはいえ、それ自体が近代、あるいは今日の日本の実情であり、そのことを踏まえて今後の議論を進めるしかないだろう」。
「『リベラル』にとって一つの試金石となるのは、社会における多様な考え方や価値観の存在を認め、それを包摂できるかどうかである」。
「日本社会において今こそ、『リベラリズム』が求められているのではないか。『自由』は『好き勝手』や『わがまま』とは別であるし、『リベラリズム』とは単なる個人の自由や、まして利己主義を意味するものではない。むしろ社会における多様な存在を認め、それを守るための各個人の責任を強調するものこそが『リベラリズム』である。『保守』と『リベラル』は直ちに対立するものではない。むしろ日本において必要なのは、社会の行動や判断の基礎となる『保守』の確認であるし、多様な個人の生を受け入れる『リベラル』の確立である。両者は同時に追求することが可能であるし、追求されてしかるべきである。本書は、自らが社会を担っているという自負と責任感を持った『保守』と、多様な価値観を表明し、受け入れるだけの気概と道理を持った『リベラル』の確立を目指して執筆された」。
「日本の『保守』と『リベラル』を考える上での3人のキーパーソンとして、福沢諭吉、福田恆存、丸山眞男を取り上げたい。福沢は言うまでもなく、日本における『リベラル』の源流に位置する思想家であり、その後の影響もきわめて大きい。福田と丸山はしばしば、戦後日本における『保守』と『リベラル』の代表的論者と見なされたが、その知的営為は今日なお重要である」。
「現代の日本において求められているのは、21世紀にふさわしい新たなリベラリズムの構想である。それはけっして、これまで日本で『リベラル:』や『保守リベラル』と呼ばれたものの単なる焼き直しであってはならない。・・・今こそ、日本の歴史的蓄積を踏まえた、本格的な『リベラリズム』を確立する必要がある。・・・まず着手すべきは、『多様な価値観を表明し、受け入れるだけの気概と道理を持ったリベラル』の再建である」。
「はたして現代日本において、社会のメインストリームにあえて異を唱え、あくまで自らの精神の独立を維持する、気概ある『リベラル』は存在するのだろうか。他者に対する寛容と相互理解を自らの精神の基本的態度とし、その上で自らの責任において新たな企てに着手する創造的な『リベラル』はいるのだろうか。日本のみならず、世界における自由と平等、そして公正のための秩序を打ち立てるために奮闘する『リベラル』を見出せるのだろうか。日本における『リベラリズム』の確立は、いまだ実現されていない未完のプロジェクトである。このことをあらためて確認しておきたい」。