榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

紫式部は、埋もれ木を折ってさらに地中深く埋めたような引っ込み思案だったんだって・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3218)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年2月7日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3218)

ウメにメジロ(写真1~4)が群がっています。ルリビタキの雄の若鳥と思われる個体(写真5)、カワラヒワ(写真6)、ハクセキレイ(写真7)、シロハラ(写真8)、ツグミ(写真9)をカメラに収めました。クリスマスローズ(写真10、11)が咲いています。因みに、本日の歩数は11,758でした。

閑話休題、『紫式部は今日も憂鬱――令和言葉で読む<紫式部日記>』(堀越英美・紫式部著、山本淳子監修、扶桑社)は、紫式部の手になる『紫式部日記』の令和言葉訳です。

とりわけ興味深いのは、●紫式部の性格、●藤原道長との関係、●清少納言の悪口――の3つです。

●紫式部の性格

「何もかもが曇りなく白い御前を見渡すと、女房たちの容姿やお肌のアラまでくっきり浮かび上がって見える。まるで上等な墨絵に黒髪を生やしたみたいだ。ますますいたたまれなくなって恥ずかしい気持ちになるので、昼間はほとんど中宮様の御前に顔を出せずにいる」。顔が盛れないのでサボりますというわけだ。

「すばらしいものや楽しいことを見聞きしても、なんとなくおっくうで、いつもの悩みに心がひきずられてしまうのだ。思わずため息をついてしまうことばかりで、とっても苦しい。それでもやっぱり今は、どうにかしてつらいことを忘れてしまおう。悩んでいたってどうしようもないことだもの」。

「細殿の三つめの戸口の部屋に入って寝っ転がっていると、小少将の君もいらっしゃった。話すことはやっぱり宮仕えのつらさ。寒さでごわついた衣類を脱いで隅へ押しやり、モコモコした厚手の服を重ね着して、香炉に火をいれる。体が冷えているから仕方ないけど、かっこ悪いよね、なんて言っているところに・・・(公達たちが)次々と立ち寄ってくる」。

「こんな偉そうなことばかり言っておいてなんだけど、私たち女房があの童女たちのように衆目にさらされなさいと言われたら、落ち着かずに歩き回ってしまいそう。自分も宮仕えを始めるまでは、こんなに人前に出ることになろうとは思っていなかった」。平安時代の貴族女性は、夫や親兄妹以外の男性とは御簾や几帳越しに対面し、さらに扇や衣の袖、長い髪で顔を隠していたので、直接顔を合わせて会話することはほぼなかったのです。

「あのころ(宮中に足を踏み入れた日)を思い返すと、すっかり宮仕えに慣れきっている自分に嫌気がさしてしまう」。

「私みたいに、埋もれ木を折ってさらに地中深く埋めたような引っ込み思案な性格でも、斎院様にお仕えしてたら、初対面の男性と和歌を詠み交わすことだってできると思うんだよね」。

「とまあ、人様の欠点についてあれこれ書いてきたけれど、そんな欠点など何一つ思い当たる節もなく過ごしてきたというのに、老後が不安なのは自分のほうだという救いのない現実に突き当たってしまった」。

「人生なんて、人それぞれ。自信たっぷりにキラキラして楽しそうに見える人もいれば、何をしていてもさみしくて、何にも夢中になれない私みたいな人もいる」。

「年齢も、出家にちょうどいい年ごろである。今よりさらに老いぼれたら、目が霞んでお経が読めなくなるだろうし、気力もますます衰えていくだろうしね。信心深い人のまねをしているようだけど、今はただ、出家のことしか頭にない。といっても、罪深い人間は出家しても極楽に行けるとは鍵らない。私って前世でどれだけ悪業を犯したんだろと言いたくなるようなつらいことばかりが多い人生だったことを思うと、なにもかも悲しい」。

稀有な文学的才能に恵まれていたことは疑いようもないが、身近な友達にはなりたくないタイプの女性のようですね。

●藤原道長との関係

「渡殿の女房部屋で寝ていた夜、誰かが部屋の戸を叩く音が聞こえた。こわいので返事をせずに夜を明かす。翌朝、こんな和歌が届いた。『こっちはコンコン鳴く水鶏よりもせつない気持ちで一晩中泣いて木戸をコンコン叩き続けたのにがっかりだな~』。返歌を書く。『ただごとじゃない勢いで戸を叩く水鶏は期待が大きそうですから、戸を開けていたらどれだけ後悔していたことか』」。戸を叩いた男性の名は書いていないが、雇い主の藤原道長と仄めかしたかったのでは。

●清少納言の悪口

「賢いつもり、といえば清少納言! あの人こそ、したり顔がすごい人だった。あんなにインテリぶって漢字を書き散らかしてるけど、よく見れば全然教養が足りてない。ああいう『人と違う自分』でいたがる人って見ててイタいし、年取ったらただの変な人になるだけ。おしゃれ気取りの人にありがちなんだけど、殺風景でどうってことない状況でも『エモい』と感動し、すてきなところを見逃すまいとしているから、自然と嘘っぽい上っ面だけの人になっていくんだよね。そんな薄っぺらな人が、どうしていい老後を送れると思う?」。辛辣ですね!