成功寸前までいっていたルイ16世一家の逃亡が失敗したのはなぜか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3249)】
早朝、我が家の庭にも雪が積もっています(写真1、2)。雨を受けながら、クルメツツジ(キリシマツツジ。写真3、4)が咲き始めています。雨上がりの東京・文京の小石川後楽園は、静寂に包まれています。アオサギ(写真8)、マガモの雄(写真9)、見頃を迎えているサンシュユ(写真10、11)、カワヅザクラとカンヒザクラ(ヒカンザクラ)の競演(写真12)、苔生した石(写真13)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は11,357でした。
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閑話休題、『王の逃亡――フランス革命を変えた夏』(ティモシー・タケット著、松浦義弘・正岡和恵訳、白水社)は、気鋭の歴史家による、1791年夏の夜のルイ16世・マリ=アントワネット一家のパリからの逃亡を時系列で描いたドキュメンタリーです。
パリから逃亡しフランス革命を公然と否定するというルイ16世の行動は、自分たちの国王が国民を見捨てて裏切ったことを白日の下に晒してしまったのです。怒った民衆たちにパリに連れ戻され、逃亡は失敗に帰します。
著者はこの逃亡未遂事件がその後のフランス歴史に与えた影響を詳細に考察しているが、私にとって興味深いのは、マリ=アントワネットの愛人、スウェーデンの伯爵のアクセル・フォン・フェルセンの献身的な協力などによって成功寸前までいっていた企てが、なぜ失敗してしまったのかということです。
「国王(ルイ16世)の常習的な優柔不断と頼りなさは、フランス革命全体の起源と進路に深遠なる影響を及ぼしていた。この事件に関して言えば、逃亡を早くから断固として決断していれば、成功の見込みはほぼ確実に大きくなっていたことだろう」。
「そのような行為(逡巡)は、もちろん、国王がフランス革命の真の意味とその広範な訴求力を理解できなかったことと密接に関わっていた。彼は、フランス革命によるおぞましいもろもろの変化は、国民議会における少数の急進派と彼らがパリの『ごろつき』を煽動し支配することによって惹起された、と考えていたのである」。
「ルイが王妃の影響力にあらがってパリに居続け、フランス人のほとんどがあれほど熱心に望んでいた市民王の役割に収まっていたとすれば、どうなっていただろうか。とすれば、フランスは――アメリカ合州国で起こった出来事とより類似した道筋を辿ることによって――真の民主主義に向かって平和のうちに進化していっただろうか。この一連の『もしそうだったら』は、もちろん、答えを探ることも示すことも不可能な問いかけである。しかしながら、そのように思いめぐらすことによって、ある種の決定的な出来事がフランス革命と歴史に及ぼした潜在的な衝撃力が浮上してくるのである」。
実に読み応えのある一冊です。