森鴎外の『鴈』のヒロイン・お玉のオナニー問題について・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3435)】
ルリフタモジ(学名:ツルバキア・ヴィオラセア。写真1)が咲いています。キノコ(写真2、3)が生えています。我が家の庭では、アサガオ(写真4)、ツユクサ(写真5)が咲いています。我が家の庭師(女房)の、玄関に茶色いオンブバッタ(写真6、7)がいるわよ、との声に慌てて駆けつけました。
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閑話休題、某書評家が、森鴎外の『鴈』にはヒロイン・お玉のオナニー・シーンが描かれていると書いているのを読み、びっくりしました。『鴈』は好きな作品で若い時分から何度も読み返しているのに、迂闊にも気づかなかったのかと狼狽したのです。そこで、書斎の書棚から『鴈(がん)』(森鴎外著、岩波文庫)を引っ張り出してきました。明治13年、東京の無縁坂――。親に楽をさせたいと高利貸しの妾になった若く美しいお玉が、妾宅の前をいつも通るものの、ほとんど言葉も交わしたことのない医科大学生・岡田に思いを寄せるが、相手も自分のことを憎くは思っていないと感じています。
そのお玉が、岡田といっしょになる夢を見て、「『ああ、うれしい』と思うとたんに、相手が岡田ではなく(旦那の)末造になっている。はっと驚いて目をさまして、それから神経が興奮して寝られぬので、じれて泣くこともある」という場面が描かれています。また、「教育家は妄想を起こさせぬために青年に床に入ってから寝つかずにいるな、目がさめてから起きずにいるなと戒める。少壮な身を暖かい衾(ふすま)のうちに置けば、毒草の花を火の中に咲かせたような写象がきざすからである。お玉の想像もこんな時には随分放恣になって来ることがある。そういう時には目に一種の光が生じて、酒に酔ったように瞼から頬にかけて紅(くれない)がみなぎるのである」という記述もあります。しかし、これ以上の表現はどこにも見当たりません。
なぜかホッとしたのだが、久しぶりに『鴈』を再読して、いくつかの気づきがありました。その一つは、元来、性格のいいお玉が若い男性に恋心を抱いたことで、その心境が変化していく過程が臨場感豊かに描かれていることです。恋した男が大きく変化することは自分の体験で承知済みだが、女性も同じなんだと、妙に納得してしまいました。
思わぬ再読の機会を与えてくれた某書評家に感謝しなければいけないのかも。