私を一挙に青春時代に連れ去ってしまった作品・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3793)】
【読書の森 2025年8月11日号】
情熱的読書人間のないしょ話(3793)
東京理科大生のアーチェリー(洋弓)の練習を見ていたら、学生時代に弓道(和弓)を習ったことを懐かしく思い出してしまいました。
閑話休題、短篇集『はじめての文学 宮本 輝』(宮本輝著、文藝春秋)に収められている『星々の悲しみ』は、浪人中の18歳のぼく・志水と、医学部進学を目指して浪人中の有吉、草間との友情物語です。
ストーリーテリングが巧みなこと、意外な結末が控えていること、文学と人生について余韻が残ること――さすが宮本輝、読んで損のない青春小説です。
私がこの作品をとりわけ気に入ったのには、実は、もう一つ個人的な理由があります。
中之島の中央図書館の一般閲覧室で『復活』を読んでいる、少し年上の女子大生らしい女性への志水の淡い恋心が、私を一挙に青春時代に連れ去ってしまったからです。
「ぼくは中学生の時代から約六年間、ただの一度も、同じ年頃の女の子と口をきいたことはなかった、それなのに、ぼくはその時なんのためらいもなく、本棚からあとずさりして彼女の傍に行き、『その本、もう読み終りますか?』と訊いたのだった」。