中世の女性たちの息遣いが身近に感じられる、彼女たちの会話が聞こえてくる一冊・・・【情熱的読書人 間のないしょ話(3828)】
トロロアオイ(写真1~4)が咲いています。マイマイガの幼虫の死骸にクロヤマアリが群がっています(写真5)。キャベツが育っています(写真6)。
閑話休題、『女の顔をした中世―― ベルギー・オランダの都市と女性たち』(イェレ・ハーメルス、アンドレア・バルディン、シャネル・ドゥラメイユール編、青谷秀紀訳、八坂書房)では、中世のベルギー、オランダの街頭を行き来する女性たちの息遣いが身近に感じられます。彼女たちの会話が聞こえてきます。
本書に登場するのは、夫と言い争う妻、思いやり深い母、遺言書を書きとらせる母、家政婦として働く女、商売を営む市場の女、口の悪い魚売り、交渉するビジネスウーマン、金貸し女、売春宿の女将、誘惑する娼婦、罪を犯した女、敬虔なペギン(修道院には入らずに宗教活動をする女性)と恋文を認めるペギン、物言う女、蜂起を叫ぶ女など、著名ではない一般の女性たちです。彼女たちが社会とどのように関わっていたのか、彼女たちの人生がその運命を共にする男たちの人生とどのように異なっていたのかが、当時の法的文書を繙くことによって明らかにされていきます。
●都市における女の一生――良家の子女から捨て子まで、●女性と結婚――パートナーの選択、婚姻を巡る争いとさまざまな関係、●女性と財産・投資・ビジネス――女が企業家になる方法、●敬遠な女性たち――「共に、いとも清く生きる」ペギンについて、●現場で働く女性たち――同職組合の内と外で、●性悪女――女性と暴力、犯罪、そして暴動、●エロスと女性――セクシュアリティ、性的同意、そして売春。無類に興味深いエピソードがてんこ盛りです。
掲載されている16世紀初頭に描かれた娼婦の画には、「立ちんぼが男から金を受け取っている。半ば脱がされた娼婦の衣服と、欲情に満ちた顧客の視線が、この後起こることを示唆している」という説明が付されています。