榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

足利事件――姿が見えなくなった真実ちゃんを必死に探す父親と真犯人の距離が60mだった可能性・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3855)】

【読書の森 2025年10月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3855)

我が家の向かいの小学校では、朝から、運動会の応援をする児童たちの元気な声が響き渡っています(写真1)。残念ながら、フジバカマ(写真2~4)畑にアサギマダラは未だ出現していません。ジャコウアゲハの雌(写真5)、キタテハ(写真6、7)、ツマグロヒョウモンの雄と雌(写真8、左が雄。撮影助手<女房>がスマホで撮影)、雄(写真9)、雌(写真10)、アキアカネの雌(写真11)、アオドウガネ(写真12)、チョウセンカマキリの卵鞘(写真13。行き合った若い女性の自然撮影家・岩崎さんが見つけた)をカメラに収めました。自公連立解消の公明党のポスター、「やると言ったら、やり切る」だって。

閑話休題、『足利事件――冤罪を証明した一冊のこの本』(小林篤著、講談社文庫)は、1990年に栃木県足利市で松田真実ちゃん(4歳)が殺害された足利事件の真実に肉薄したドキュメントです。捜査を再開して真犯人を逮捕してほしいという著者の思いがひしひしと伝わってきます。

私が強い衝撃を受けたのは、この3点です。

●姿が見えなくなった真実ちゃんを必死に探す父親と真犯人の距離が60mだった可能性
「さまざまな条件による犯行の流れとは、このようなことである。午後8時10分頃。父親が、堤防の上からマミちゃんを呼んだ。『あ、パパだっ!』。砂場で犯人と遊んでいたマミちゃんは、返事をしようとする。犯人は、あわてて彼女の口を片手でふさぐと、もう一方の手で首を押さえて砂場に覆いかぶさるように伏せる。・・・公園内は外から見ると暗すぎる。父親は、堤防の斜面を下まで降りたところで、わが子の名前を呼び続けた。『マミー! マミー!』。砂場から、父親が呼んだと思われる場所までの距離は、わずか60メートルほどだ。・・・父親があきらめて、堤防を上がり向こう側へと去った時、犯人はぐったりしたマミちゃんを抱えてすぐ後ろの葦の茂みに飛び込んだ。・・・これは、恣意的な空想に過ぎないだろうか。捜査本部の当初の見方も、これと大筋はほぼ一致していたが、いずれにしても真相は犯人が知るのみである」。

●この事件の犯人として逮捕され、17年半も獄に繋がれた後に、冤罪と判明した菅家利和さんの知能が精神薄弱の境界域で、他人に迎合しやすい性格であること

この事件に関する書籍を何冊か読んできたが、この件は本書で初めて知りました。

著者は、面識のない犯人がマミちゃんを暗くなった公園の砂場まで連れ出すには、よほど巧みな会話能力を備えていなければ実行不能な犯行であり、菅家さんはこの犯行をやり遂げるだけの能力を備えていないことは捜査陣も分かっていたのではないか、と怒りを込めて指摘しています。

●著者が考える真犯人
「非力な一記者には徒労ばかりの身の程わきまえない調査ですが、怪しいと思われる人たちの取材を折々に重ねてきました。そして、いま、そのうちの一人に、真犯人がいると思っています」。

著者・小林篤が考えている真犯人と、『殺人犯はそこにいる――隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』の著者・清水潔が真犯人と確信する「漫画のルパン三世に似た男」は同じ人物なのではないでしょうか。清水は、このルパン三世似の男の氏名、住所を知っているだけでなく、この男のDNA型が真犯人のそれと一致していることを明らかにしています。それなのに、栃木県警、宇都宮地検は、あれこれ理由をつけて、再捜査しようとしないのです!