榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

 「今様」と呼ばれた当時の流行歌の世界・・・【山椒読書論(61)】

【amazon 『梁塵秘抄』 カスタマーレビュー 2012年8月28日】 山椒読書論(61)

「遊びをせんとや生(う)まれけむ、戯(たわぶ)れせんとや生(む)まれけん、遊ぶ子どもの声聞けば、我が身さへ(え)こそ揺(ゆる)がるれ」――「今様(いまよう)」と呼ばれた当時の流行歌を、時の権力者・後白河院(上皇)が集めて編んだ『梁塵秘抄』の中で、最も知られている一首だろう。

私なりに流行歌風に訳してみると、「遊びをしようと生まれてきたか、戯れしようと生まれてきたか、遊ぶ子らの声聞けば、むずむずと私の体も揺れてくる」となろうか。

この歌を「子供たちの声を聞いた遊女が罪深い自分を恥じて身を震わせる」と解釈する研究者もいるが、賛成できない。

今様の全体像を知るには、簡にして要を得た説明が特色の『ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 梁塵秘抄』(後白河院・植木朝子編、角川ソフィア文庫)が最適だ。

例えば、「あてにさせておいて通ってこない薄情な男に投げかけた女の呪詛」が込められた今様の原文――「われを頼めて来ぬ男 角(つの)三つ生(お)ひ(い)たる鬼になれ さて人に疎(うと)まれよ 霜 雪 霰 降る水田(みずた)の鳥となれ さて足冷たかれ 池の浮草となりねかし と揺りか(こ)う揺り揺られ歩け」には、「私を頼みに思わせておきながら訪ねて来ない男よ。角の三本生えた醜い鬼になれ。そして人に嫌われよ。霜や雪や霰の降る水田を歩き回る鳥になれ。そして足が冷たく凍えてしまえ。池の浮草になってしまえよ。あちらへ揺られこちらへ揺られして。定めなく漂い歩け」という分かり易い訳が付されている。