「戦争はしない方がよい。戦争は勝っても負けても、悲しみだけ残る」という徴兵体験者の声を聞け・・・【情熱的読書人間のないしょ話(157)】
朝早くの散策中に、メマツヨイグサの群落に出会いました。黄色い花たちが涼しい風を受け、気持ちよさそうに揺れています。
閑話休題、『徴兵体験 百人百話』(阪野吉平著、17出版)は、山形県に住む著者が、地元の110人から太平洋戦争の徴兵体験を聞き取り、記録したものです。
「戦後の開拓団は地獄よ。内地に帰れたのは半分に満たないと思うよ。牡丹江に開拓団が集まって来た時、街の中で野犬が死んだ赤子をくわえているのを何回も見た」。
「街全体が黒の世界だった。川では死体が無数に海の方へ流れていった」。
「上官はいつも俺たちのことを一銭五厘の兵隊と言っていた。ハガキ一枚ほどの大きさの紙で人間が集まる。人間の方が兵器より安く集められる。その頃、ハガキ一枚一銭五厘だった」。
「戦ったと言ったって君にはわからないだろうが、殺すか殺されるかの毎日だ」。
「食う物は飼料並みだから骨と皮ばかりになり、栄養失調でバタバタ死んだ。毎日火葬だ」。
「撤退することになり、敗走途中は白骨街道と言われ、死体が目に入らない日はなかった」。
「戦争ってむごいもんだよ。殺すか殺されるかだ。民間人でもだ」。
「百二十人の中隊で、アメちゃんの爆撃で死んだのは少数。大部分はマラリアで死んだ。日本へ帰ったのは九人だけ」。
「特攻隊知ってるべぇ? 飛行機に爆弾縛りつけて飛び立ち、敵艦に体当たりする。その隊員たちは出発近くなると顔真っ青になって、ブルブル震えて何も話すことなく飛んで行った」。
「敵の戦車に対抗する練習を始めた。何のことはない、自爆の訓練だ。俺らだは布団爆弾と言っていたが、座布団くらいの爆薬を背につけて、自分で掘った穴の中から戦車に突っ込む練習だ。戦車にぶつかって死ぬ方法よ」。
「(捕虜になった日本軍の)将校や下士官も平等扱いだから、威張っていて働かなかったりするといつの間にか事故死する。表向きは事故死だが本当は周りの者に殺されたのよ」。
「周りには首のない死体、両足のない死体がいろいろなものと一緒に浮いていた」。
「戦争はしない方がよい。みじめだ。関係のない人が死ぬ。戦争は勝っても負けても、悲しみだけ残る」。
「俺たちの収容所の六百人中、日本へ帰ったのが四十六人だけ」。
「毎日、練習機に実弾の代わりに二百五十キロの砂袋を積んで敵艦に突っ込む練習。死ににいく練習よ」。
「特攻の新兵器は『回天』という人間魚雷で、敵艦に衝突して自爆するのが任務だった。・・・一・五トンの爆薬を積み、一人乗りで脱出口もなく、発進すれば死が待っている」。
「子供が死んだ母親にすがりついて泣いていたのは、今、思い出しても悲しくなる」。
「戦争ができる国」を目指している輩に読ませたい一冊です。