組織に属している人間にとっても起業家精神は役に立つ・・・【あなたの人生が最高に輝く時(63)】
起業家精神
組織に属しているビジネス・パースンも、自分の担当業務については個人事業主的な一面があることを意識することで、仕事に取り組む上での考え方、行動に一層の緊張感が生まれてくる。この意味で、起業家を目指す学生向けのスタンフォード大学の講義のエッセンスを抽出した『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』(ティナ・シーリグ著、高遠裕子訳、CCCメディアハウス)は、起業家候補生に限らず、広く読まれるべき一冊である。
インベンション・サイクル
クリエイティビティ、イノベーション、起業家精神を養う上で、何より必要なのは具体的な方法論である。閃きを形にするため、想像力→クリエイティビティ→イノベーション→起業家精神→想像力→・・・を回す「インベンション・サイクル」は、このように説明されている。●想像力=存在していないものをイメージする力。●クリエイティビティ=想像力を駆使して課題を解決する力。●イノベーション=クリエイティビティを発揮して独創的な解決策を編み出すこと。●起業家精神=イノベーションを活用してユニークなアイデアを形にし、他の人たちの想像力を掻き立てること。
「インベンション・サイクルを理解し、必要な姿勢と行動を身につけ、実践すれば、より多くのチャンスに気づき、思い込みを疑い、ユニークなアイデアを思いつき、実行できるようになるはずです。これらのツールはとても強力で、みなさんが理想とする人生の道筋を描く助けになることでしょう」。
各段階の留意点
各段階における留意点は下記のとおりである。●想像力を育むには、先ずは、一つの世界に飛び込み、その世界にどっぷり浸かること、そして、今あるものに代わるものを思い描くことが必要。
「多くの人が、大きな目標に挑戦するのを怖がっています。自分が大きな舞台にふさわしいと思えず、力不足が露呈するのではないかと恐れていることもあります。何かを成し遂げても、自分の実力ではないとか、自分は成功に値しないといった感情を抱くことはインポスター・シンドロームと呼ばれますが、こうした感情はきわめて一般的です。・・・背伸びして大きな役割につこうとするとき、あるいは大きな舞台に上がろうとするとき、自分が何を知らないかを把握し、助けを求め、誰もがおなじように感じている、あるいは感じたことがあると知っておくと楽になります。やってみて初めて自信が生まれるのであって、自信があるからやるわけではないのです」。
●クリエイティビティを発揮するには、やる気を掻き立てること、実験を繰り返しながら課題を解決することが必要。
「私たち一人ひとりが、周りに言われたからといってやるのではなく、自分の内側からやる気が湧いてくるようにするにはどうすればいいのかを学ぶ必要があるのです」。あくまでも、喜ばせるべき顧客は自分自身なのだ。
「実験しましょう。これまでやったことがないことに挑戦し、どうなるか試してみましょう。実験は、社会的なことでもいいですし、体を使うことでも頭を使うことでも構いません。結果を評価し、そこから何を学んだかを考えます。それによって、おなじ分野で新たな実験をする意欲が湧いてきたでしょうか」。実験を繰り返すことによって、精度が高まり、自信が付いてくるのだ。
●イノベーションを起こすには、フォーカスすること、そして、フレームを変えてユニークな解決策を打ち出すことが必要。
「日常生活のなかで、楽しめていないことを選び、楽しくする方法を見つけましょう。状況を違った角度から見られる方法や、その経験を変えることのできるものを考えましょう」。うまくいかないときは、フレームを変えてみよというのだ。
●起業家精神を発揮するには、粘り強く続けること、周りを巻き込むことが必要。
わざわざスタンフォード大学に留学しなくても、起業家精神は本書で学ぶことができるのだ。