榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

若い時から「やばいじじぃ」たちに励まされてきたさだまさしの老人論・・・【情熱的読書人間のないしょ話(916)】

【amazon 『やばい老人になろう』 カスタマーレビュー 2017年10月18日】 情熱的読書人間のないしょ話(916)

今朝の利根運河(千葉県北西部)は、濃霧の底に沈んでいます。駅からの視界も閉ざされています。クモの網に付いた水滴が朝日に輝いています。因みに、本日の歩数は10,688でした。

閑話休題、私たち夫婦の好きなテレビ番組にNHK・BSで放送されている『日本百名山』があります。この主題歌「空になる」をさだまさしが歌っているのですが、思わず一緒に口ずさみたくなるような素敵な歌なのです。

やばい老人になろう――やんちゃでちょうどいい』(さだまさし著、PHP研究所)は、65歳になったさだの「やばい」老人論です。

「山本健吉先生は、同郷ということですごく優しく、親切にしてくださった。しかも、僕が世間から何故か大いに叩かれているときに、応援してくださったのだ。『精霊流し』が暗い、『無縁坂』でマザコン、『雨やどり』で軟弱、『関白宣言』で女性蔑視と批判され叩かれたのだ。その上。『防人の詩』で右翼だと言われた。・・・いわれのない批判だと思っていても、さすがに僕も落ち込んでいた。それで山本先生に、『僕なんか、たかが歌だと思ってるんですが、人格まで非難されるんですね』と、つい弱音を吐いたら、『いや、詩歌というのは、そういうものなんだよ。自分の人生観を賭けて歌を歌ってるわけだから、そういうことを言う人がいるのは当然のこと。ただ君は、もういなくなった人を歌うのが非常に上手だ』と言ってくださった。・・・『君は間違っていないんだから、何を言われてもやりつづけなさい』。大先輩の『老人力』に助けられた一言だった」。

「(物事を悲観的に捉えずに前向きに捉えるのは)僕が20代の後半に、今里(広記)先生や山本先生、小説家として62歳で芥川賞を受賞した森敦先生といった『じじぃ』との出会いがあったからだと思う。『こんなじじぃたちに出会って幸せだったな』と思い始めた頃だった。それまで迷っていたことに、もう迷わなくなった。むしろ、『あんな素敵なじじぃになるためには、人生このペースだと間に合わんぞ』と思うようになった」。

「僕が憧れる『じじぃ』、それも『やばい老人』の条件は3つある。その1『知識が豊富』、その2『どんな痛みも共有してくれる』、その3『何かひとつスゴイものを持っている』」。

「『あいつと会って話してると面白い』。そう言われるような『じじぃ』が、理想的な存在なのだ」。「老人の意見を聞きたいと思わせる社会。それに対してちゃんと答えられる『やばい老人力』」。「若い力にはじじぃも勇気をもらう。ともあれ、こうした気の置けない仲間の集まりや、人間同士のコミュニケーションが、世代を超えた相互理解の軸になっていく。人と人とが、僕をターミナルにして行き交える環境ができあがるのだ。そこで発せられる『じじぃ』の一言が、若い人に勇気を与えることもある。それが本当の意味での『やばい老人力』なのではないかと思う。人は、誰もが歳を取って老いていく。だとしたら、若いやつから頼りにされ、良い意味でも『やばいよね、あの人』と言われるような『じじぃ』になりたいものである」。若い時から多くの「やばいじじぃ」に励まされてきた著者は、今度は、若者たちから会いたいと思われるじじぃになりたい、若者たちの背中を押してやれるじじぃになりたい、若者たちに『老人力』を伝えられるじじぃにないりたい――と考えているのです。

本書を読んで、さだの歌だけでなく、さだという人間も好きになりました。