日本列島には、かつて、さまざまなゾウが棲息していた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1878)】
ビヨウヤナギ(写真1~4)、キンシバイ(写真5~9)が黄色い花を咲かせています。サツキ(赤紫色、桃色)も頑張っています。
閑話休題、『科学の最前線を切りひらく!』(川端裕人著、ちくまプリマー新書)では、科学のさまざまな分野で活躍中の6名の研究者が取り上げられています。
とりわけ興味深いのは、「恐竜から魚類まで、脊椎動物の起源を追う――宮下哲人」と「ゾウとサイがあるく太古の日本――冨田幸光」です。
宮下哲人――
「(宮下の業績の)ひとつは、『琥珀から恐竜のしっぽを発見』。ミャンマーの市場で見つかった9900万年前の琥珀の中にコエルロサウルス類の小型恐竜の尻尾が入っており、軟部組織や羽毛まで残っていたというものだ。コエルロサウルス類は、ティラノサウルス類や現生の鳥類を含む系統。これほどまでに保存状態のよい尻尾と羽毛が琥珀に密封されて現代に届けられるのははじめてのことだ」。
「宮下さんの現在の大きなテーマは、『脊椎動物のボディプランの起源』だ。・・・『脊椎動物って、一見まとめやすそうに見えるじゃないですか。骨があって、背骨があって、背骨をたどっていくと、頭蓋骨が悩を包んでいて、その悩からは神経の束が1本、2本、3本・・・と出ていて、その神経をたどると鼻があって目があって耳があって・・・そういうものを僕らはボディプランっていうんですけど、これを見るのが本当に大変なんです。とにかく要素の数が多すぎる。個々の要素が進化の中でどういうふうにつながってきたのかを見るのは、骨だけじゃ足りないですし、骨にしても、化石記録の肝心なところは抜け落ちていますから』。それを宮下さんが一気に解決、というわけにはさすがに行かない。まず突破すべき着目点が必要だ。宮下さんが着目したのは『顎』だ」。
「恐竜は絶滅したけれど、ワニもニワトリも、今生きている。ということは、遺伝子を見ることもできるし、発生を追うこともできる。ゲノム編集技術を駆使して、また、古生物学と発生学で鍛えた目でワニやニワトリを研究すれば、それは間に挟まれた肉食恐竜たち、巨大な獣脚類についての知見にもつながりうる」。
冨田幸光――
「野生のゾウやサイなどの巨大な哺乳類が数千万年前、数百万年前という時期に、日本列島にいたという、心躍る話だ。特にゾウについては、様々な系統のものが大陸からやってきたり、日本列島で独自の適応を果たし『ゾウの楽園』のような時代もあったという。古生物学者である冨田さんは化石から多くの情報を引き出して、かつてこの地の巨大な動物たちが闊歩した時代を再現してみせる。そして、環境の変動の中で、彼らが消えていった仕組みについて語る」。
日本に棲息していたゾウは、古い順に挙げると、ゴンフォテリウム、ステゴロフォドン、ツダンスキーゾウ、ミエゾウ、ハチオウジゾウ、アケボノゾウ、ムカシマンモス、トウヨウゾウ、ナウマンゾウ、マンモス――と、驚くほどの多さです。