榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

農林中央金庫、ゆうちょ銀行、地方銀行、ソフトバンクが危ない・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1935)】

【amazon 『ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機』 カスタマーレビュー 2020年8月1日】 情熱的読書人間のないしょ話(1935)

千葉・流山の「杜のアトリエ黎明」で開催中の「飯田信義 切り絵作品展」は、郷愁を誘います。ハツユキソウ、ヒマワリが花を咲かせています。

閑話休題、タイトルが気に懸かって、『ソフトバンク崩壊の恐怖と農中・ゆうちょに迫る金融危機』(黒川敦彦著、講談社+α新書)を手にしました。

著者の主張を一言で言えば、CLO(ローン担保証券)という、リスクの非常に高いローンをもとにした金融商品を大量に買い込んでいる金融機関や企業は近い将来、破綻する可能性が限りなく大きいということになります。「『コベナンツ・ライト』は貸し付け時の条件が緩く、借り手が追加で債務を増やすことのみを制限している貸付金です。レバレッジドローンの新規の貸し出しに占めるコベナンツ・ライト・ローンの比率は、2010年には4%程度でしたが、最近では80%以上に急激に増加しています。こうした緩い条件の貸付金(ローン)が証券化され、新たなCLOとして世界中で売られているわけです。リスクの高いローンをもとにした金融商品ですから、当然利率は高く、何ごともなければ投資家は高いリターンを得られます。どこかで聞いた話だと思いませんか? そう、少しでも高い金利を求めて複雑なCLO、CDO(債務担保証券)を買いあさった世界中の投資家が一夜にして大損害を被ったリーマン・ショックと、そっくりの構図になっているのです。世界はまた、同じ過ちを繰り返そうとしています」。

「この、世界でいちばん危険な金融商品を、世界でもっとも大量に保有しているのが実は日本の金融機関なのです。なかでも農林中央金庫(農林中金)の保有量はあまりに巨額です」。

「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は企業や国が破綻した際の保険のようなデリバティブ商品です。・・・『CDSのような3文字略語のつくデリバティブ商品を売る』。わけのわからない金融商品を売ることで、顧客は損してゴールドマン・サックスはバンバン儲かる。つまり、『とにかく顧客を騙してゴミのような商品を売りつけて大損させ、ゴールドマン・サックスに莫大な利益を生み出させる』ことが(社内で)評価される会社だということです。・・・ゴールドマン・サックスの触手はもちろん日本にも及んでいます。日本におけるゴールドマン・サックスの代表的な顧客例は、▶ゆうちょ銀行 ▶年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) ▶ソフトバンク この3つです。日本国民の貯金、それから大切な老後資金である年金が喰い物にされているのです。デリバティブはもし金融危機に見舞われれば、一瞬にして吹き飛んでしまう『爆弾』だからです」。

なお、私の理解しているところでは、CDSというのは、企業や国などの破綻リスクを売買するデリバティブ(金融派生商品)で、投資対象の破綻に備えた保険の機能を持ちます。CDSの買い手は売り手に一定の手数料を支払う一方、投資先がデフォルト債務不履行)となった場合には売り手が損失を肩代わりし、「保険金」を支払います。

「(ゼロ金利政策で経営が)苦しくなった地祇は収益欲しさにCLOのような怪しげな金融商品を買いまくったというわけです」。CLOのように危険なジャンク債の保有が高比率な地銀ワースト10の銀行名と、反対に保有比率が低い優良地銀として千葉銀行、横浜銀行、福岡銀行の名が挙げられています。

18兆円という巨額の借金まみれのソフトバンクにも、著者は厳しい視線を注いでいます。「いわば。投資会社として巨大に膨れ上がったソフトバンクグループは、巨額の投資資金が逆回転することによって、危機に陥る可能性があるのです」。

「CLOは庶民が見てもわからない金融派生商品ですが、私に言わせればババ抜きです。市場でババをひいた金融機関や個人は甚大なダメージを負います。この、過大なレバレッジ体質(少額の資本で多額の取引をする)を放置したままでいいのでしょうか。リスクの高い金融商品を規制せずに野放図に放置したままでは、被害者が増えつづけるだけです。最初からババ抜きとわかっているものは、行政の力でストップし、強制的にブレーキをかけることが必要と考えます」。

著者の恐ろしい予測が当たらないことを願っているが、今後の動向に注視せざるを得ないと考えています。