たった54字でも、ドキッとする小説が書けるとは!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2590)】
スイレン(写真1、2)、キショウブ(写真3、4)、カラー(写真5、6)が咲いています。アメリカハナズオウ‘シルヴァー・クラウド’(写真7~9)の葉は、淡桃色→白色→中心部が緑色へと変化します。
閑話休題、『54字の物語(8)――みんなでつくる 意味がわかるとゾクゾクする超短編小説』(氏田雄介編著、武田侑大絵、PHP研究所)には、思わず唸ってしまう54字の超短編小説が多数収録されています。
●リモートワークで私の生産性は急上昇。通勤なし、雑務なし、余計な会話なし。そして何より、尻尾(しっぽ)を隠す必要がない。
●ネット通販で包丁を買おうとしたら、一緒に雨合羽もどうですかと提案された。そういえば返り血のことを忘れていた。
●無人島に漂着して、やっと救助されたと思ったら俺を乗せたヘリが墜落。そこで目が覚めた。なんだ夢かと砂浜で安堵。
●「無人島へ、ようこそ。君で百人目の漂着者だ」「でもあなた一人しか見かけませんが・・・ ・・・」「すぐまた一人になるさ」。
●蟻がせっせと働くのを横目に音楽に興じたキリギリスは、いつしか超一流のバイオリニストになり巨万の富を得ました。
●彼は常に一本筋の通った固い信念の持ち主だ。どんな無理難題に直面しようと決してブレることなく堂々と人に任せる。
●結婚おめでとうございます。今回欠席すること、誠に申し訳ございません。次回は出席できる事を楽しみにしています。
●手術の日を迎えた。看護師は皆口々に「そんな不安な顔をしないで。大丈夫。簡単な手術ですよ」と励ます。執刀医を。
●彼と同じ屋根の下で暮らすのが夢だった。最初は同棲に反対していた彼だけど、今は静かに眠っている。この床(ゆか)の下で。
●いい噂を聞かない新薬の広告に「お客様からの感謝の声」が並んでいる。小さな文字で注意書きが。「故人の感想です」。
常々、あなたの書評は長過ぎると女房から言われている私にとって、本書は本当に勉強になりました。