榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

芥川龍之介の短篇小説『羅生門』の真のテーマは何なのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3808)】

【読書の森 2025年8月26日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3808)

ゴーヤー(写真1~4)が花と実を、カキ(写真5)が実を付けています。隣家のアサガオ(写真6~8)が涼しげです。

閑話休題、『「羅生門」を読む』(関口安義著、三省堂選書)は、刺激的な一冊です。

黒澤明監督の映画『羅生門』と混同するといけないので、小説『羅生門』の粗筋を示しておきましょう。

平安時代の、ある夕冷えのする秋、荒れ果てた気味の悪い羅生門の下に、一人の下人が雨やみを待って佇んでいる。下人は飢え死にするか、盗人になるかで悩んでいる。下人が楼上に上がると、猿のような老婆が打ち捨てられた死骸の髪の毛を抜いているではないか。下人は素早く老婆の着物を剥ぎ取り、足にしがみつこうとする老婆を手荒く死骸の上へ蹴倒す。やがて、死骸たちの中から裸の体を起こした老婆は、梯子の口まで這って行き、門の下を覗き込む。「外には、唯、黒洞々たる夜があるばかりである。下人の行方は、誰も知らない」。

●何と、これは23歳の青年(芥川龍之介)が書いた小説なのです。

●本作品の読解は読み手に委ねられていると断った上で、著者・関口安義自身の「読み」が示されています。
「老婆への反逆は己への反逆につながった。かくて、下人は若々しい行動力で『新生』し、『夜の底』へかけ降りて行く。そこは下人がそれまで属していた秩序ある世界ではなく、無秩序ながら活気に満ちた自由な世界であった。下人は旧き己を捨て去り、『反逆の論理』で身をまとい、生きることを決意する。そして『黒洞々たる夜』に姿を消す。下人の行為は、倫理的是非の問題ではない。精神のありようの問題なのである」。

●従来、言われてきたように「人間のエゴイズム」がテーマなのか、それとも、関口が主張するように「反逆の論理」、「新生」が真のテーマなのか、あるいは、これらとは異なるテーマが隠されているのか――自分で判断するために、『羅生門』を再読しなければと考えています。