下町の町工場で半沢直樹的世界が展開される・・・【続・リーダーのための読書論(32)】
半沢直樹
テレビドラマ『半沢直樹』の第1部~第2部が大変な人気で、最終回は関東地区で平均視聴率42.2%、瞬間最高視聴率46.7%を獲得したという。多くのビジネスパースンがスカッと溜飲を下げたことだろう。第3部(ロスジェネの逆襲)、第4部(銀翼のイカロス)のテレビドラマ化が待ち遠しい。
町工場の場合
半沢直樹は大手都市銀行が舞台であったが、同じ著者の『下町ロケット』(池井戸潤著、小学館)は、下町の町工場の苦闘物語である。
主人公・佃航平は、小型エンジンを開発・製造・販売する中小企業の社長である。死んだ父親の跡を継いで7年だが、会社は、重要取引先からの突然の取引終了通告、取引銀行から融資を断られたための資金繰り難、社内の意見対立、その上、特許侵害で訴えられる始末で、難問山積である。
少数の協力者と力を合わせ、佃は何とかこれらの難関を切り抜けていくが、ロケット打ち上げに執念を燃やす巨大企業・帝国重工が前途にドーンと立ち塞がる。というのは、佃製作所が先行取得したバルブシステムの特許を強引に買い取ろうと圧力をかけてきたのだ。バルブシステムというのは、燃料を燃焼室に供給するための部品だが、これが大事なのは、ロケット打ち上げの成功率に直結するからである。
佃には、「自分の手でエンジンを作り、ロケットを飛ばしたい」という夢がある。「カネの問題じゃない」、「これはエンジン・メーカーとしての、夢とプライドの問題だ」、「俺はうちの会社で、社員たちと夢を追いかけてみるよ」、「俺はな、仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」。
ところが、佃製作所が切望する部品採用の可否を審査する帝国重工の過酷な評価テストが陰険かつ凄まじい(半沢直樹が受けた金融庁検査のシーンを思い浮かべてほしい)。「なにしろ、あんな小生意気な中小企業にでかい顔をさせるわけにはいかないんだ。帝国重工の要求水準がいかに高いものなのか、思い知らせてやって欲しい」、「そんな話(売上予測)は、半値八掛け二割引きだ」、「まあ、大勢の株主の批判にさらされることもない零細企業だと、その程度のものかも知れないけどさ。でも、ウチでは通用しない。本当にウチと取引する気、あるんですか」。
最終部分では、胸がいっぱいになって、本の文章が涙で滲んでしまった。
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