榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

女性にも男性にも「婚活」が必要な理由・・・【MRのための読書論(37)】

【Monthlyミクス 2009年1月号】 MRのための読者論(37)

結婚しない人たち

MRであろうと、MRをサポートする人であろうと、仕事ができて、魅力的な人なのに、なかなか結婚しない人たちに接するたびに、なぜだろうという疑問を抱いてきた。『「婚活」時代』(山田昌弘、白河桃子著、ディスカヴァー携書)という本が、この長年の不審に解答を与えてくれた。

「婚活」が必要な時代

女性、男性を問わず、結婚したくないから結婚しないのではなく、結婚したいのにできない、さらには、いかにも結婚できそうにない女性や男性が結婚できないのではなく、すぐにでも結婚できそうな感じなのに、結婚できずにいる人たちが非常に多いのだという。

それはなぜか。本人たちの責任というよりも、1980年以前と以降とでは、結婚を巡る社会環境が激変してしまったためだというのだ。結婚に至る3つのプロセス――「出会い」「相互選択」「結婚の決断」に分けて見てみよう。「出会い」――以前は、職場が男性と女性が出会う場として機能していたし、そこで相手を得られなかった場合のセーフティネットとして「お見合い」が存在していた。「相互選択」――以前は、出会いの回数が少なかったから、選択肢が少なく、出会った相手が素敵に見えた。「結婚の決断」――以前は、結婚後のライフスタイルが画一的だったので、結婚後の生活が予測でき、かつ、その予測に男女間の相違がなかった。だから、悩まずにどんどん結婚できたのだ。

ところが、1980年以降は、結婚相手と出会う機会が自動的にセットされなくなった→出会いの多い人と少ない人の格差が広がってきた→出会ったとしても、双方の魅力のミスマッチで、相思相愛にならなくなった→相互選択したとしても、夫婦の役割分担をどうするかという問題など結婚後のライフスタイルのすり合わせが必要になってきた→結婚しにくくなってきた、というのだ。

今や、「就活」(就職活動)と同じように、「婚活」(結婚活動)が必要な時代、「婚活」なしでは結婚できない時代になったのである。

男女別・結婚できない理由

女性が結婚できない3大理由は、「周りにいい男性がいない」「いいと思った男性にはもう相手がいる」「恋人はいるが、結婚に踏み切れない」だという。一方、男性が結婚できない3大理由は、「ムリ目の(水準が高い)女性にばかり声をかけ、断られてしまう」「女性に声がかけられない」「恋人はいるが、結婚に踏み切れない」だそうだ。

本書は、「婚活」が必要ということを認識した上で、この状況を打破するために、「女性たちよ、狩りに出でよ。男性たちよ、自分を磨け」と呼びかけている。すなわち、女性の場合は、自分磨きはもう十分なのだから、確率を高めるために、ともかく出会いの機会を多くすることが、「婚活」の最重要課題だとしている。男性に必要なのは、もっともっと自分を磨いて、経済力とコミュニケーション力をつけ、傷つくことを恐れない勇気を持つこと。昔は、男性が相手を狩る立場だったが、当節、状況は逆転している。女性が狩り場に出ていって、めぼしい男性をどんどん狩っていく、男性は女性に狩ってもらえるように外見も含めて自分を磨く、これが「婚活」時代の基本戦略だというのだ。もちろん、人によっては結婚しないという選択もあるだろうが、それはその人の自由だ。

女性が元気になる本

職場の女性が元気に仕事ができるようにとの願いを込めて書かれたのが、『日経WOMAN 元気のバイブル――人づきあいの心とスキル』(佐藤綾子著、日経ビジネス人文庫)である。

例えば、「同性を皆好きになる素敵な方法」は、「職場に嫌いな同性がいるよりも、『同性の同僚が皆好き』というほうが楽しいに決まっています。・・・この際考え方を変えて、同性に対する批判の原因のほとんどは、自分の中で抑圧された願望を相手が成し遂げているからだ、と素直に認めてみませんか。・・・あなたと同じ心理的仕組みを持っているけど行動が違う。そんな同性たちは皆、あなたが愛すべき存在です」といった語り口で、しっかり者の先輩が後輩に「愛と仕事の必勝法」を伝授するといった趣だ。