兵十が病気の母親のために捕った鰻を、いたずらものの小狐「ごん」が奪ってしまいました・・・【山椒読書論(831)】
【読書の森 2025年2月1日号】
山椒読書論(831)
図書館で調べものをしていたら、隅の席で、若いお母さんが小さな女の子に読み聞かせをしている声が聞こえてきた。周りに配慮しての低い声なので、内容は分からないが、子供は熱心に聞き入っている。私も久しぶりに絵本を読みたくなり、『ごんぎつね』(新美南吉作、黒井健絵、日本の童話名作選シリーズ(偕成社)を手にした。
貧しい兵十(ひょうじゅう)が病気の母親のために捕った鰻を、一人ぼっちの小狐の「ごん」がいたずら心から奪ってしまう。
鰻を食べることなく亡くなった兵十の母親の墓地への葬列を目撃したごんは、お詫びの気持ちから、鰯や栗、松茸を一人ぼっちになってしまった兵十に届け続けるが、その気持ちは兵十には伝わらない。
そして、思いがけない結末を迎える。
子供だけでなく、大人にも読んでもらいたい、原作も絵も素晴らしい作品だ。