榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

珍獣を飼うには、それなりの覚悟がいるという辛口の飼育ガイドブック・・・【情熱的読書人間のないしょ話(160)】

【amazon 『キミは珍獣(ケダモノ)と暮らせるか? きみはケダモノとくらせるか?

散策中に、我が家から近い川で餌を漁っているアオサギとチュウサギに出会いました。飛び立った彼らの写真を撮ろうと頑張ったのですが、翼を広げると2m近いアオサギの一部しかカメラに写っていませんでした。アオサギより少し小さいチュウサギは不鮮明な写真しか撮れませんでした(涙)。女房から、「(千葉県・野田で2015年7月23日に)放鳥されたコウノトリの行方が分かったそうよ」と言われ、問い返したところ、3羽のうち2羽は宮城県で、1羽は茨城県で暮らしているそうです。

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閑話休題、『キミは珍獣(ケダモノ)と暮らせるか』(飴屋法水著、文春文庫PLUS。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、常識的な動物飼育ガイドブックとは大分様相を異にしています。珍獣ショップ「動物堂」店主として数多の珍獣を扱い、自らも飼育してきた著者が、珍獣飼育は楽じゃないぞ、珍獣を飼えるのは珍人だけだと強調しているのです。

全篇を通じて、著者の言葉はかなり過激です。「女を買うのは女好きだけである。動物買うのも動物好きだけである。女好きはネガティブな言葉だが、動物好きには悪い人はいないなどと言われる。大ウソである。どちらも、自分の欲望をおし殺せないだけだ。動物好きと自然好きは違う。本当の自然好きは(もしもそんな人が本当にいるのなら)動物なんか買わないだろう。もちろん女も買わないだろう。だってどちらも不自然な行為だから」。

本書には、齧歯目、ウサギ目、霊長目、食肉目、有袋目、食虫目等の動物の購入時の注意事項、飼育に当たっての留意事項が記されています。

動物好きの私は、少年時代からいろいろな動物を飼ってきました。飼いたいと思いながら購入するに至らなかったヤマネとリスは、本書ではどのように書かれているのでしょうか。

「日本のヤマネは天然記念物である。採っても売ってもいけない。しかし見た目かわいいので似たようなヨーロッパヤマネを欲しがる人は多い。しかし輸入は今のところ難しい。それでもメガネヤマネやオオヤマネなどは売られるようになった。決してなれやすいとまでは言えないがオオヤマネなんかけっこうのん気でならすことは可能だ。飼育下での死亡率は低く繁殖も可能。初心者でも飼えるだろう。ただしメガネヤマネとアフリカヤマネは雑食といっても昆虫食が強い。うまくドッグフード等にエづかせないと、エサ用コオロギ代が月に3万なんてことにもなる。そのつもりで」。

「(リスの中で)安いのはシマリスだけである。シマリスは確かにキレイで小さく人気が高いので、シーズンになれば何千、何万といった単位で流通する。それだけに値段も安くなる。毎年それだけの数が動くのだから、それが全部生きてれば日本中シマリスであふれ返るハズだ。しかしそうならないということは、ほとんど全部病気になったり逃げちゃったりして死んでしまうのだろう。もちろん中にはちゃんと飼ってる人もいるが、人間とは現金なもので、安く買った動物の飼育はその分手ぬきになりがちだ。それにシマリスは日本の梅雨や夏に向いてない。意外と難しい動物なのだ。ショップなどでも梅雨時は、子リスが何匹も続けてバタバタ死んだりする。伝染性の病気にかかりやすく、かかると3日ぐらいで簡単に死ぬ」。著者の語り口は正直というか、何とも辛口です。

芸をする動物に人気が集まることに、私は違和感を覚えています。この点では、著者と私は同じ考えだと知り、ホッとしました。「以前うちの店のワオキツネザルを見て、『このサル、なんか芸とかするの?』と言ったオヤジがいる。信じられないことにその人は動物業界の人だ。僕が『しません』というと、『へー、芸もしないでメシ食ってるだけなのに百万以上するのか、とんでもねえな』と、それこそとんでもないことをぬかしやがった。僕はその一言で、その人との取り引きはやめた。基本的に、動物は芸なんかしない。する必要もない。飼ってたからといってメリットなんか一つもない。基本的に、食ってクソして寝るだけだ。ただただ、生きてるだけである。ただただ生きてる、ということに愛情を持てるかどうか。その動物を飼ってて楽しいかどうかはそれで決まる」。まさに、そのとおりです。