榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「縄文時代」というのは、戦後に作られた言葉だった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(292)】

【amazon 『つくられた縄文時代』 カスタマーレビュー 2016年2月3日】 情熱的読書人間のないしょ話(292)

長野の旅で印象に残ったのは、やはり一面の雪景色です。雪の線路は旅心をくすぐります。帰りに立ち寄った庭園の酔いどれの像に、妙に親しみを感じてしまいました(笑)。

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閑話休題、『つくられた縄文時代――日本文化の原像を探る』(山田康弘著、新潮選書)には、意外なことが書かれています。

第二次世界大戦以前に使われていた「石器時代」という呼称に代わり、「縄文時代」という言葉・概念が登場したのは、戦後のことだというのです。「弥生時代」とともに、発展段階的な視点に立った「新しい日本史」を記述するために用意されたものだったのです。ですから、日本以外では「縄文時代」という概念は存在せず、日本の縄文時代は、世界史的には、「本格的な農耕を行っていない新石器時代」というユニークな位置づけになっています。

ここで勘違いしてはいけないのは、著者は、「縄文時代」という日本独自の用語を批判しているのではなく、「日本の歴史において、狩猟・採集・漁撈による食料獲得経済を旨とし、土器や弓矢の使用、堅牢な建物の存在や貝塚の形成などからうかがうことのできる高い定着性といった特徴によって、大きく一括りにすることができる文化」を説明するのに非常に使い勝手のよい用語だと評価していることです。

縄文時代は「平等社会」だったのか、「階層化社会」だったのか、それとも「階層社会」だったのか――という学界の議論も含め、歴史好きの知的好奇心を掻き立てる一冊です。