この一冊で、代表的な詩人10人の詩を味わえる優れ物・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1727)】
関東では、今日までが松の内ですね。因みに、本日の歩数は10,552でした。
閑話休題、『世界近代詩十人集』(伊藤整編、河出書房新社・世界文学全集)には、ハイネ、ホイットマン、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、イエーツ、リルケ、ヴァレリー、T・S・エリオット、マヤコーフスキイの詩が収録されています。
ハイネの「ある女」は、このような詩です。「ふたりは心から愛しあっていた。女は毒婦で、男は泥棒だった。男が悪事を働く時、女はベッドにころがって笑っていた。 昼間は喜びと楽しみのうちに過ぎ、夜がくると、彼女は彼の胸に寝た。彼が牢屋に連れて行かれる時、彼女は窓べで笑っていた。 彼は彼女にことづてした。『会いに来ておくれ、わたしはお前にこがれきっている。わたしはお前を呼んでいる。渇えている』――彼女は頭を振って笑っていた。 朝の六時に彼は首をくくられた。七時には墓に沈められた。だが、彼女は八時にはもう赤いぶどう酒を飲んで笑っていた」。
ホイットマンの「私はエレキのような肉体を歌う」という詩の一節。「(奴隷市場で)競売されている女子の肉体、彼女もまた彼女自身だけのものではない、彼女は多くの母親の多産な母親なのだ、彼女は、成長して母親たちの配偶者となる人たちを産むものである。 君は曽て女子の肉体を愛したことがあるか。君は曽て男子の肉体を愛したことがあるか。それらは世界到る処、あらゆる国国、あらゆる時代において、全く同じであることを君は知らないのか」。
ボードレールの「女巨人」の一節。「強烈な奇想をいだいた造物主が 日毎に異形の子供らを身籠っていた時代、私は女王の足もとに淫らな猫が戯れるように うら若い女巨人の傍らで好んで暮したことであろう。・・・その豊満なあだ姿を悠然として跋渉し、巨大なる膝の斜面に這いのぼり、夏には屡々、不健康な日光に照らされて、 女巨人がけだるくも野づらを越えて寝そべるとき、私は山裾に平和な里がまどろむように 乳房の蔭にのんびりと好んで昼寝をしたことであろう」。
ボードレールの「死の舞踏」の一節。「鼻の欠けたる舞姫よ、御しがたき下婢よ、さらば言え、顔を顰めて踊り狂う人間どもに。『驕り高ぶる寵児らよ、いかに脂粉を粧うとも 汝らにはみな死の匂いあり! 麝香をつけたる骸骨らよ、・・・笑止なる人類よ、太陽の下、あらゆる土地にて 死は汝らの扭じれたるおどけし身振りに驚嘆し、かくて屡々汝らのごと身に没薬を薫らせつつ 汝らの狂態に死の諷刺を混ぜ合わすなり!』と」。
ヴェルレーヌの「落葉」。「秋の日の ヸオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し。 鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて 涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや。 げにわれは うらぶれて ここかしこ さだめなく とび散らふ 落葉かな」。
イエーツの「酒の唄」。「酒は唇よりきたり 恋は眼より入る。われら老いかつ死ぬる前に 知るべき一切の真はこれのみ。われ杯を唇にあて おんみを眺めかつ嘆息す」。
この一冊で、代表的な詩人10人の詩を味わえる優れ物です。