榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

巻末の「『マクベス』を読む」が読み応えがある岩波文庫の『マクベス』・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1870)】

【amazon 『マクベス』 カスタマーレビュー 2020年5月27日】 情熱的読書人間のないしょ話(1870)

女房から、見たことのない色のガがいるわよ、と大声で呼ばれました。洗濯物を干そうとした時、一瞬、室内に木の葉が舞い込んできたのかと思ったが、飛び立ってヴェランダに止まったので、ガと分かったそうです。調べると、私も初めて見るツクシアオリンガでした。パキスタキス・ルテア(黄色)、ホワイト・キャンドル(ウィットフィルディア・エロンガータ。白色)、ランタナ(シチヘンゲ。花色が次々に変化する)、キャッツ・テイル(アカリファ・レプタンス。赤紫色)、シマサンゴアナナス(エクメア・ファッスィアータ。苞が桃色)をカメラに収めました。

閑話休題、『マクベス』(ウィリアム・シェイクスピア著、木下順二訳、岩波文庫)を読んで、3つのことを考えました。

第1は、魔女たちの暗示にかかり、妻に唆された武将マクベスが、主君のスコットランド王ダンカンを暗殺したものの、罪の意識に付きまとわれ、ダンカンの遺児マルカムらに命を奪われてしまうという物語『マクベス』は、ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇の中で一番完成度が高いのではないか、という印象を持ったことです。

第2は、巻末に添えられている訳者・木下順二の49ページに亘る「『マクベス』を読む」が実に読み応えがあり、シェイクスピアの戯曲作りの秘技が解き明かされていることです。

第3は、主人公のマクベスは、実在したスコットランド王マクベスをモデルにしているが、その史実と『マクベス』がなぜこれほど隔たっているのか、という疑問を抱いたことです。

実在の人物マクベスは、1040~1057年の18年間、スコットランド王位にあり、それなりの治世であったのに、シェイクスピアの『マクベス』で、卑劣な王位簒奪者という点のみが強調されて描かれているのは、「『マクベス』を読む」で指摘されているように、シェイクスピアが、芝居は観客に受けてなんぼだと割り切っていたからでしょう。ストーリー展開上、時間的、空間的に少々の無理が生じようと、話は面白くなくてはという考えのもと、持てるさまざまなテクニックを総動員したのでしょう。

『マクベス』を読むなら、「『マクベス』を読む」が付いている岩波文庫版がいいですよ。